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ブログ・野口 誠一
第344回:遺書を書き自殺行
2012年3月12日
体験発表の続きである。
──バブルがはじけようと大震災に見舞われようと、街金の取り立ては容赦ありません。何度も街金に監禁され、暴力をふるわれ、あるときは9階のビルから窓の外へ逆さ吊りにもされました。が、そのときは少しも恐ろしくありませんでした。むしろ、「その手を放してくれ」「落としてくれ」「殺してくれ」と叫んだほどです。
すでにその頃、私は死ぬことしか念頭にありませんでした。来る日も来る日も手形に振り回され、街金にこづき回され、死ぬより辛い日々が続いていたのです。そして、ついにその時がやってきました。その日、早めにアパートへ帰ったところ、買い物にでも出たか、家内は留守でした。それを幸いに、私は家内に宛てて遺書を認めました。
先立つ背信を詫びたうえで、3000万円の生命保険で当座の暮らしを立ててほしいこと、街金のほうでも私に生命保険を掛けているから、私が死ねばその保険金で大半の借金はチャラになるから心配しなくてもいいこと、などを書き、ウイスキー1本とネクタイの束を抱えて車に乗りました。
どこをどう走ったか憶えていませんが、気が付いたら森の中でした。大きな枝ぶりの樹の下に拾ってきた石油缶を据え、そこに腰を掛けてウイスキーを飲みました。ほろ酔い気分であの世へ旅立ちたかったのです。ところが、いくら飲んでも酔いません。とうとう1本空けてしまいました。仕方なくネクタイをつないでヒモをつくり、それを首に巻き、樹の枝にかけました。
目を閉じ、呼吸を整え、そして一気に石油缶を蹴りました。首にガクッと衝撃が走りました。痛さと苦しさが同時にやってきて、やがて意識が薄れていきましたが、死ねませんでした。失敗したのです。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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