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ブログ・野口 誠一
第348回:生きる勇気与えたい
2012年4月9日
Nさんの体験発表から間もなく、NHK教育テレビの「ETV特集」で「生きてこそ人生幸あり」という番組が放映された。内容は「経営破綻、絶望、自殺未遂…生と死の淵をさまよった男たちの物語」「自殺を思いとどまらせた一言」「孤独・不安からの心の再起」という三部構成で、八起会会員の3人の人生航路をたどりながら、「家族愛」を浮き彫りにするものだった。
私ははじめ、NHKからこの企画が持ち込まれたとき、大いに迷った。3人の会員をモザイクはない、音声も変えない、そういう番組に出演させてよいものかどうかの迷いである。3人とも倒産、法的整理、免責となった身ではあるが、その過程で多くの債権者に迷惑をかけた事実は消えない。3人にとっても、それを見る債権者たちにとっても、せっかく癒えかけた傷口がまた痛み出すのではあるまいか、そこを恐れたのである。
NHKは全国ネットである。ETV特集はコンスタントに5%(500万人)の視聴率を稼ぐという。そうなれば債権者はもとより、親戚や知り合いの目にもとまるに違いない。私は迷いながらも3人をノミネートし、NHKの趣旨を伝えた。その3人のなかにNさんが入っていることは言うまでもない。そして、3人はこう答えてくれた。
「私たちは一度死のうとした人間です。しかし、いまは心底、生きていてよかったと思います。私たちの経験が、かつての私たちと同じ立場、同じ境遇にある人たちの励ましになるなら、少しでも生きる勇気を与えられるなら、喜んでとまでは言えませんが、自殺防止の会の会員として取材に応じましょう」
私はこの言葉に感動するとともに、迷いもふっきれた。そして番組が作られ放映されたのである。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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