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  • ブログ・高橋 聡

    第177回:働き方改革への対応(労働時間の適正な把握)

    2020年7月9日

     
     
     

     働き方改革関連法が順次施行されています(【図1】)。そこで、働き方改革関連法への対応というテーマで法改正への具体的な対応策について解説してまいります。

     今回も前回に続き「労働時間の適正な把握」への対応について説明します。(その②)

     中小運送業において、ドライバ―の労働時間把握に関しては、正確に把握している会社が極めて少数であることが実情です。2019年4月から労働安全衛生法改正により時間把握の義務化はスタートしていますが、給与が1本いくらの歩合給制であること、運行手当が残業代という定額残業制であるため、時間を把握する意識や必要性があまりなかったというのが実態です。

     しかし、未払い残業代請求の事案になると、相手方が拘束時間ベース、つまり最も長い時間数で請求をしてくるため、会社側が「休憩時間」をデータや根拠をもって立証していくことが必要となります。そもそも労働時間数と給与計算を連動させることは労働基準法の大原則です。どのような給与制度、例えば完全歩合給制であっても時間把握は必要となることを、中小運送業の経営者は再認識する必要があります。

     細かな話になりますが、給与制度に定額残業制といった「みなし」時間制度を導入することは実際の労働時間数が「みなし」を上回った場合に「差額」を支給することなどの前提があれば認められます。しかし、労働時間数を「みなし」で管理することは認められず、「実際の労働時間数」での計算が義務付けられます。運送業の運転職は「請け負い」や「委任」ではなく、会社と「雇用関係」にあることが運送事業法で規定されているため、これからは「実際の労働時間数」による給与計算が必要となると考えるべきです。

     さて、ドライバーに関してはデジタコ、アルコールチェック機器を使用するか、日報などを集計することとなります。手作業での集計は限界があるので、可能な限りデジタコなどにより把握すべきでしょう。なお、事務員や倉庫作業員にはスマホ型勤怠管理システムが有効である旨を前回説明しましたが、ドライバーの場合、4㌧以上のトラックのドライバーはタコグラフの装着義務があり、スマホ型勤怠管理システムデータよりタコグラフデータの方が優先されるため適しません。軽貨物、2㌧、3㌧車であっても可能な限りデジタコによる時間把握が適していると考えます。

     点呼場所と駐車場が隣接している場合、「始業」は、例えばエンジンスタート時刻の10分前からと定義すること、終業も同様にエンジンストップ時刻から10分後というように点呼やアルコールチェック、点検、洗車などについて一定の時間を取って管理することもいいでしょう。始業、終業で「拘束時間」を把握し、休憩はコンビニ停車時間、高速SA停車時間、トラックステーション停車時間、荷主センター内で時間指定がある場合の空き時間などを「休憩時間」とし拘束時間数よりマイナスし労働時間を把握、算出していきます。そして把握した労働時間数を基に所定内労働時間、所定外法定内労働時間、法定外労働時間、深夜時間、休日時間を正しく算出し給与計算に活用していくことが必要です。

     人が作業するのは限界があるので、労働時間数計算把握計算機能の付いたデジタコなどのIT機器を導入すべきと考えます。

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    高橋 聡

    保険サービスシステム社会保険労務士法人
    社会保険労務士 中小企業診断士

    1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
    トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。

     
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