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    八起会・野口会長インタビュー「甘えこそ最大の敵」

    2009年1月14日

     
     
     

     弊紙連載「再起の群像 倒産110番」でおなじみの八起会・野口誠一会長。数多くの経営者、そして倒産者の「再起」に向けた相談に乗ってきた同会長に、経営者の心得について聞いた。


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    野口会長
    これだけ景気が悪くなると、相談件数も急激に増えたのでは?
    「そんなに言うほど増えてはいない。そもそも、『景気のせい』『軽油が値上がりしたから』というのは経営悪化の理由にはならない。会社が儲かっていた時のお金はどこに行ったのか。その時、貯めようとは思わなかったのか。すべては自分の『甘え』が原因だ」
    景気・不景気にかかわらず、努力が必要ということですね。
    「努力しない『落第企業』は淘汰されて当然だといえる。もう一つのパターンとして、社長の仕事と称してゴルフに行ったり、仲間と一杯飲んだりするのを『努力』だと思い込んでいる経営者がいる。これは『ズレた』努力でしかない。『5年や10年に1度、不況は必ず来るものだ』という認識のもと、好景気の時も油断せず経営努力を継続すること。人の話を聞く、勉強会に参加する、本や新聞を読む。人が必ず死ぬように、企業もいつかはつぶれる。だから、つぶれないよう努力をすることが大切」
    壁に「倒産の原因ベスト10」(図参照)が貼ってあるが。
    「ここに書いてあることは全て『普通』、できて当たり前のことだ」
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    「倒産の原因ベスト10」
    具体的には?
    「まずは、儲かる仕事と、そうでないものを見極めること。赤字になる仕事は思い切って断るか、何か工夫をすること。たとえば運送業であれば、遠方で採算の合わない配送先へ行くのに、途中でもう一件荷主を見つけるとか。それと、計数管理をきっちり行うこと。収入と支出のバランスを分かっていない経営者が驚くほど多い。支出が多いなら、どこかを削る必要がある。会社の経費をゴルフや酒に費やすのは、社長の言い訳でしかない。どうしてもやめられないのなら、休みの日に行きなさい。酒は家で飲みなさい」
    先生は家族の大切さも説いておられます。
    「家庭が円満であることと経営状態は関係する。やはり『家族のためにがんばる』という気持ちは強い。家族関係も経営も、うまくいっていない時は勝手な行動が積み重なり、悪い人脈ができていく。それをやめ、悪友を断ち切って良質な人とつき合うことが大切だ。それから、お勧めしておきたいのが『早起き』。早く起きれば、仕事が始まる頃には頭が冴えている。子どもと一緒に朝食を摂ることも良い」
    相談に来るのは、どのような人ですか?
    「いろいろいるが、ひとつ言いたいのは『余裕のあるうちに相談しなさい』ということ。『あと1年早く来ていれば…』という人が多い。目安として、銀行が(融資を)渋り出したらもう危険状態。『自分の器はここまで』と腹を括り、それ以上のことはやってはいけない」
    先生のところに来て、立ち直っていく人もいますね。
    「経営の再建には5年も6年もかかるのに、お金に直結するような話が聞けると期待して来られる人もいる。そういう人に再建の道を教えることはできない。経営者の資質として必要なのは、『素直に聞ける』ということ。たとえばさっきの話を聞いて、毎日早起きして、人の2倍も3倍も頑張れるかどうか。みんな『よく分かりました』と口にするが、本当に重要なのは『分かったら、行動を変える』こと。そして、お金がなくとも夢やロマンを捨てない人は強い」
    倒産しないためには?
    「成功者に理由はないが、倒産者には理由がある。世の中には『成功』の本ばかりあふれているが、それはあまり参考にならない。でも、『失敗しない真似』ならできる。失敗例と見比べて、自分に何が足りないのかをよく考えてみることが必要」
    残念ながら「倒産」の道を選ばざるをえない人もいます。
    「私も経験したが、倒産は本当に苦しい。だから、現役で経営をがんばっている経営者には『(倒産しないように)努力しなさい』と言うし、倒産してしまった人には『倒産を恐れるな』と言っている」
    「倒産を恐れるな」とは?
    「倒産は経営の失敗であって、人生の失敗ではない。倒産というのは人生の中の『点』でしかなく、それは決して恥ずかしいことではない。その『点』から転んで立ち上がれないことがいけない」
    苦しい状態にある倒産者には、どんな言葉をかけるのか?
    「『せめて幸せになろう』と言う。たとえば倒産すると、忙しくしていた頃には気づけなかった家族のありがたさに気づく。本人が行動を変えると、奥さんや子どもまで変わることもある。これは、本当に幸せなことだと思う。倒産は天からのプレゼントであって、感謝すべきもの」
    改めて聞きますが、経営に必要なことは?
    「経営努力と、体と心の健康。いまがあるのはお客さんのおかげ、社員のおかげ、国のおかげ。だから、お客さんのために良い品物・サービスを提供し、社員のために働きやすい環境を整え、国のために税金を納める。反省と感謝の心を忘れないことが重要だ」
    ■プロフィール
     八起会会長・ノグチプランニング代表取締役。1930年東京生まれ。1955年、25歳で玩具メーカーを設立。2年後には月商1500万円へと急成長を遂げるが、ドルショックと放漫経営がたたり77年に倒産。翌年、「倒産者の会」設立を呼びかけ、「八起会」を発足。「倒産110番」にて再起・整理に関する相談を無料で受ける。また、ノグチプランニングを設立し、執筆・講演活動も行っている。著書は「修羅場の人間学」「こんな社長が会社をつぶす!」など。

     
     
     
     
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