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    井阪運輸・岡田社長「『一級品質の安全』を構築へ」

    2008年3月12日

     
     
     

     大手メーカーから中小の酒蔵まで、神戸―阪神間は13年前の大震災の影響はあったとはいえ、今なお国内一の酒造業地帯だ。この地域の物流業も、酒とともに歩んできたといっても過言ではない。
     昨年、酒造メーカーの輸送に古くからかかわった事業者の倒産、廃業が相次いだ。「『老舗』といわれるところは古い体質で、流れの早い時代には曲がり切れない」。創業から119年を数える井阪運輸(兵庫県西宮市)の岡田孝二社長は、そう分析する。


     同社は、お世辞にも成長産業とは言い難い日本酒業界での売り上げが現在3割。老舗として同社が、ここまでハンドル操作を誤らなかったのは、生え抜きの岡田社長など現場を知る外部の血を積極的に導入してきたことと無縁でないかも知れない。「井阪家は資本の代表。会長は運輸にタッチせず任せてくれている」。
     岡田社長の入社は68年。季節商品の酒の売り上げの繁閑落差を別分野で埋め合わせようと、当時から営業一本でやってきた。
     別分野は、主に洋菓子にあった。例えばある洋菓子メーカーが当時、お中元商品の開発をしたため一時保管の倉庫が必要になった。閑散期に入った日本酒の配送センターを使えないか。今でいう「資産の有効活用」と「経費の流動化」を橋渡しした。
     岡田社長は、「観念上の言葉から出たものではなく、苦し紛れのアイデアだった。メーカーの抵抗もなく、最初はそんなものという感覚だった」と話す。
     80年代に入り、日本酒メーカーも多品種少量生産を余儀なくされる。そして配送への影響はむしろ、その後にくる小口出荷だった。手をこまねいては、どんどんと路線業者の市場になってしまう。メーカー担当者らと打ち合わせをして83年、酒造メーカー4社分の県内出荷分をまとめて卸業者へ配送する共同配送を立ち上げた。
     共同配送について岡田社長は「2km圏内に4社がある。積むところも下ろす所も同じという、単純な発想だった」。そうはいっても共同配送は各メーカーの利害が対立しやすい。早い時期にこうした体制を組めたのは、メーカーの危機意識もさることながら、「井阪なら無茶をしないという与信を頂いたのでしょう」。さらっと言ってのけるところに「現場」の匂いを感じさせる。
     共同配送はそのあと量が増し、直集直配方式から自社倉庫での仕分け方式へと5年前に切り替えた。近接する大阪にも配送地域を延ばし、現在はお菓子などの食料品も積み合わせて50件以上の問屋へ共同納品している。
     インタビュー途中、清酒の関連業であることを匂わせる「一級品質」という言葉を岡田社長は数回使った。すなわち「安全」のことなのだという。例えば同社の次のような取り組みも「安全」に集約されていく。
     昨年、ドライバーらも含めた全社員に名刺を持たせるようにした。会社への帰属意識がややもすると希薄になりがちだからという。「地域社会にいて勤め先を聞かれたとき、ドライバーは何と答えているんだろう。『運転者です』と答えているのかな。そんなとき名刺を渡せれば…」。帰属意識を言うとき会社に一級の、人に誇れる品質があれば。その一級を「安全」と読み替えた上での取り組みだ。「Gマーク」「グリーン経営」「プライバシーマーク」の認証を受けているのは、取り組み全体の一端でしかない。
     これまで同社は従業員に比較的恵まれていたと感じている。「これからもまじめに運送業をやろう」。そんなメッセージを従業員に引き継いでいきたいと考えている。
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    【企業概要】
    1889年、井阪組として創業。合資会社を経て67年、井阪運輸に改組。従業員210人。車両台数110台。06年度売り上げ28億円。会長は井阪一仁氏。
    ◎関連リンク→井阪運輸

     
     
     
     
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