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物流ニュース
倉庫需要への対応策 各社の取り組みは
2020年4月21日
首都圏の大型マルチテナント型物流施設の賃料は、2020年末までの2年間で2.2%上昇する見込みだという予測が、シービーアールイー(日本本社=東京都千代田区)によってなされている。実際に物流倉庫への需要は大きく、倉庫事業者には保管スペースを探している荷主からの問い合わせが多く来ているようだ。だが、需要があっても、従来からの保管を生業としている中小の倉庫事業者の多くが、その需要を取り込むことが難しくなっている。
物流倉庫などの工業用施設を専門とする不動産調査会社の一五不動産情報サービス(同大田区)の曽田貫一社長は「2020年の首都圏の供給量は、実はそんなに多くはない。一方で21年の供給量は非常に多くて、過去最高水準となる」という。
「現在、需給は逼迫しているが来年あたりは少し空室率が上がらざるを得ないのではないかと見ている」とし、「賃料の上昇トレンドが少し緩やかになるか、場合によっては止まってしまうかもしれない」としている。
また、「賃料が高くなっている原因はEC関係がどんどん借りているからだが、昔ながらの倉庫事業者は収益構造が変わっていないので、物件を借りるのは難しくなっているかもしれない」と考えている。
このように、物流倉庫を利用している荷主のタイプは現在、大きく分けて2つある。一つは、市場規模が拡大しているEC関係で、もう一方は従来からある原料や資材、製品などを扱っているメーカーなどの荷主である。
曽田社長も述べたように、従来型の営業倉庫は保管を行っているが、その保管料は、一時期の運送会社の運賃と同じように、賃料や人件費が上がっていくなか、大きく変化しないままでいる。つまり、施設などへの新たな設備投資を行うことは難しい。
EC需要と同様に、従来型の保管需要も衰えていない。むしろ、その需要は高まっているが、従来型の保管業務を行う倉庫事業者は収益構造が変わらない限り、将来的には事業を継続していくことが困難な状況になりつつある。
こうした状況を変えるかもしれない取り組みが動き出した。イーカーゴ(鈴木清社長、同港区)では3月から、「協働物流センター大井」(同大田区)の稼働を開始。稼働面積は1218.77坪で、すでに同社には多くの問い合わせが来ている。
鈴木社長は「大きな倉庫はどんどんできているが、我々のような中小は、それぞれで規模を拡大することが難しい。なので、皆で協力してやろうというのが一つ。それと、労働力が足りず、労働力を確保することも難しいというのがもう一つある。1社では難しいことでも、何社かが集まれば力になる」と話す。
「『協働物流センター大井』では、それぞれの会社で足りない部分を補い合う、シェアをしていこうというのがコンセプトとなっている」とし、「ここをプラットフォームに中小企業が集まって、新たなビジネスをいろいろテストしていきたい」としている。
このように、各企業で足りない部分をシェアしていくということが今後、必要になるという考えを持っている会社が増えている。倉庫事業を行っているロンドグループのラインシステムジャパン(千葉県船橋市)の向野祐司社長は「保管料は時代に合わせていくべきだけれど、大きくは変わっていない。一番困るのは人件費。ここ数年の人件費の上昇が経営を圧迫するほどに人件費が上がっている」という。
「人件費を上げなければ、労働力を獲得できない。当然、いただいている保管料で家賃や人件費を払っているので、そのバランスが崩れている。そういう意味で、労働力のシェアという考えはありだと思う。シェアをすることによって効率化を図るという考えは検討すべきことだと思っている」としている。
◎関連リンク→ 株式会社一五不動産情報サービス
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