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    採算度外視で仕事を強奪…適正価格より1万円も安値で

    2009年7月15日

     
     
     

     物量の減少で、運送事業者は荷物確保に昨年暮れから苦しめられていた。しかし、6月ごろから荷主企業で在庫となっていた商品が動きだしたのか、景気の回復によるものなのかは定かではないが、一部で荷物が動き出したようだ。しかし、大きな仕事が発生すれば運賃の安値合戦が繰り広げられ、専門に輸送している運送事業者が専門外の輸送業者から荷物を取られてしまうケースが発生している。専門に輸送する運送事業者は「原価計算以前の問題で、採算性を無視した運賃では太刀打ちできない」と嘆いている。
     大阪府岸和田市に本社を構える運送事業者は特殊な車両を導入するなどして、主に建設資材や機械を専門的に輸送。先日も奈良県から大阪府泉州地域まで約500tの輸送で荷主企業から見積もり依頼を受けた。
     片道約150kmで、積み地は奈良県。見積もりを大型車1台約3万円で出した。同様に奈良や大阪の運送事業者も同じ荷主から見積もりを求められ、ほぼ同額の金額で見積もりが出されていた。輸送内容などから、岸和田市の運送事業者より若干少ない大型車1台2万8000円程度で確定していた。
     しかし同輸送の仕事をどこで聞きつけたか、「専門外の運送事業者が突然、荷主企業を訪れて、当社の見積もりより1万円も安い大型車1台1万8000円で見積もりを出し、500tの輸送を根こそぎ取られる結果となった」と岸和田市の事業者。
     同社は荷主に掛け合うが、「同じ大型車1台1万8000円で輸送してくれるのであれば輸送を依頼してもいいが、それ以上は出せない」と、荷主も安値運賃に魅了され、同社の話を聞こうともしなかった。
     同社は「奈良県と言っても、ほぼ三重県に近い地域から大阪までの輸送で、1日1便が限度の内容。それで大型車1台1万8000円では利益どころか赤字覚悟の運賃と言える。当社はドライバー教育にも、トラック装備にも努力している。1万8000円では数千円から1万円程度の赤字になる。採算性を度外視した営業はその運送会社だけでなく、周りの運送会社にも大きな損害を与えるため、運賃の大幅な値下げ合戦は業界を滅ぼす」と話している。
     1日大型車1台の運賃が1万8000円では採算が取れるとは考えにくい。同社の言う通り、周りに損害を与えかねない運賃の大幅な値下げは、業界にとってマイナスでしかない。(佐藤弘行記者)

     
     
     
     

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