「県内の引越料金が急速に下落している。近距離の単身引っ越しなら、1万円台を切る見積もりを出す事業者もいる」と嘆くのは、愛知県で引越専門の運送を行う事業者。愛知県内で単身の場合は「1万円台の見積もりは当たり前の状態。ツーマンで7000円という破格の見積もりを出したライバル会社もあった」という。ツーマンで7000円となれば、アルバイトの時給だけでも採算割れの可能性が高い。同事業者は「赤字を覚悟したダンピングとしか思えない」と続ける。

　背景にあるのは、県内の急速な雇用の減少と見られる。愛知県の有効求人倍率は2007年度が1.91倍で、これまで全国から多くの人材を吸い上げてきた。これが昨秋からの景気悪化で過去最悪の0.49倍（09年5月）に落ち込んだ。それまで受け入れてきた人材が再び全国各地に散ったと見られる。「市場の縮小で需給バランスも崩れているのでは」と同事業者は見ている。（中道幸男記者）