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物流ニュース
コロナ禍における物流業界のM&A リスクヘッジとして活発化
2021年3月1日
新型コロナウイルス感染症の拡大と緊急事態宣言によって、リスクヘッジという形でのM&Aが増えている。これまで物流業界のM&Aは、後継者不足と業界再編を目的としたものが多く、コロナ禍においても大きくは変わっていないが、他業界からのリスクヘッジによる物流会社へのM&Aの動きが見られるようになり、活発化している。
バトンズ 「コロナがM&A後押し、プラットフォームで小規模会社も」
M&A総合支援プラットフォームを運営しているバトンズ(大山敬義社長、東京都千代田区)では、2020年4月から6月はコロナの影響で譲渡案件登録数が落ち込んだものの、緊急事態宣言の解除をきっかけに登録数が増加傾向となった。
2020年10月から12月の全体の譲渡案件登録数は、2019年10月から12月の3.5倍に増加。だが、全体からみると物流業界のM&Aは多くない。大山社長は「物流業界は以前から業界再編といわれているが、他業界と比べると数は少なく、なかなか増えていない」と話す。「原因として、多くの物流会社がM&Aをよく知らないということのほか、小規模な会社が多く、複雑な下請け構造であることも影響している」という。
これまでのM&Aは敷居が高く、買い手が選ぶ場もなかったが、M&Aのプラットフォームができたことで、小規模な会社でも選ぶことができるようになり、良くも悪くもコロナがM&Aを後押ししてくれている状況。この機会に同社では、自治体の助成金が活用できるようにしてM&Aを推進している。
カーレントサービス 成長戦略の根幹に「利益率を見極める」
物流業界でM&Aが活発でないことについて昨年、3件のM&Aを行ったカーレントサービス(同大田区)の保坂高広社長は「物流業界の経営者の中にはM&Aの知識がなく、抵抗がある人が多いが、弊社ではM&Aを成長戦略の根幹に位置付けているので積極的に検討している」と話す。
同社では、2020年に3社を総額23億で買収し事業を拡大。グループ全体で対前年比の売り上げはプラスとなり、23年度が終わるまでに年商50億円、営業利益率10%という目標に向けて選択と集中を行っている。
「コロナで安いからといって、簡単に手を出すということはない。専門家に相談しながら、自社にとって利益率の高いものかどうか見極める」としている。
コロナ禍で、企業の多くが耐え忍んでいる状況が一段落すれば、一気に倒れる会社やM&Aの譲渡企業が増えてくることが予想されており、コロナを機に物流業界のM&Aも増えていくとみられている。
ビジョナル・インキュベーション 物流業界のニーズ堅調
事業承継M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」を運営しているビジョナル・インキュベーション(同渋谷区)では、「物流業界はコロナ以前から、業界の再編や、後継者不在の問題もあって、譲渡企業と譲り受け企業双方のニーズが堅調」としている。
また、コロナの影響についてM&A業界全体でみると、4月から6月頃は様子を見る企業が多く、M&Aの検討をストップする企業が多かったものの、「ビズリーチ・サクシード」では、物流業界はコロナ禍以前と変わらず、ニーズが堅調だった。
2020年4月から12月の物流関連の譲渡案件数は、昨年同期比で1.5倍、一昨年同期比で3.6倍と、譲渡案件数は増加している。ビズリーチ・サクシード事業部の前田洋平事業部長は「もともと後継者不在・業界再編の問題があったなか、コロナで経営が厳しい企業の譲渡が増加している」という。
譲渡側の傾向としては、下請け、孫請けなど川下企業や、海外からの荷物を運んでいた会社など、運んでいるもので違いがある。また、トラックドライバー10人前後の小規模事業者の案件が増えており、アフターコロナを見据えて、買収を検討する企業が増えてくると予想している。
コロナで売り上げが芳しくなく、EC事業を強化したい小売りやメーカーなどが、倉庫やラストワンマイルの配送などを内製化するために物流会社のM&Aを検討するケースも増え、軽貨物事業者も検討対象となっている。だが、軽貨物事業者は基本、個人事業主であるため、M&Aには問題がある。首都圏と福岡で軽貨物配送サービスを提供しているケイソー(千葉県柏市)の伊藤淳社長は、「あくまでも個人的な意見だが、個人事業主の軽貨物事業者を束ねている運送会社を、ドライバー目的でM&Aをしても、うまくいかないのではないか」と説明。「ドライバーは、会社のオーナーに付いていることが多く、個人事業主でもあるので、会社を買収してもドライバーがついてこない可能性は十分に考えられるため、軽貨物業界のM&Aは難しい」としている。
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