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物流ニュース
引越業界の業態革新進む、現代のニーズに応じた展開
2009年10月20日
引っ越しを手がける事業者の業態革新(イノベーション)が目覚ましい。家庭にあるものがすべて「必要なもの」であった時代から、「不要なもの」であふれかえっている現代。新築住宅が乱立し、「幸せな引っ越し」が主流であった時代から、生活のダウンサイジング(小型化・合理化)を前提とした引っ越しが増えつつある現代。イノベーションは、そうした現代を捉えた新たな引越ビジネスの主戦場となりつつある事実を物語っている。
「レンタカートラックをやろうと思う」。一般貨物と引越事業を兼業する中小事業者は、そんな構想を持っている。この構想には、ダウンサイジング型の引っ越しとインターネットがカギとなって生まれた。
レンタカーといっても通常とは違い、ドライバー付きのレンタカーだ。そう、何のことはない。法的にも「他人の需要」でトラックを運行させるトラック運送事業そのもののことで、現状の仕組みの中で合法的に経営が可能だ。では、なぜ「レンタカー」の呼称をわざわざ使うのか。
この事業者の見立てを紹介しよう。都市部の老朽化した公営住宅は築40年を経過する建物が多くなり、取り壊しのため引越費用のみを渡されて一時退去を求められる住民が多く発生している。15万円程度支給された費用を、より安上がりに済ませるにはどうするか。答えは、「引越屋さん」に頼むのではなく、「トラックをレンタカー会社から借りる」である。こうした引っ越しの場合、多くがレンタカー会社に需要が流れ、「引越業界」が需要を取りこぼしている。
こうした需要は、従来定着していた電話帳への広告掲載では絶対に取り込めない。レンタカーのインターネットサイトで上位に検索される必要があるのだ。広告にもひと捻りを加えたイノベーションにより、例えば学校の音楽祭など、ちょっとしたモノの移動を伴う行事の主催者からの検索行動にも耐えられるビジネスモデルになりうる。
事業者は、「あちこちで、こうしたビジネスを展開する事業者ができれば提携関係も結べる」として、連携の輪作りにも奔走している。
◇ ◇
「保管スペースが500坪。トランクルームもやっています」。引越専業の、この中規模事業者は数年前から、引越客の家具などを引き取る事業を本格化させた。いまでは新たに大掛かりな土地を手当てし、保管庫を充実させているというのだ。
無償で引き取った家財が、実は大化けすることも。中古品のネットオークションが、これまで無価値とされてきたものを、「知る人ぞ知る」の世界に引き込んで大きな価値あるものになる時代。事業者は通常、まず地元の中古品オークション会場に出品し、そこでも価値なしと判定されればインターネット市場に持ち込んでいる。
この事業者の新聞折り込み広告は、スペースの8割が「中古品買い取ります」の項目で、残りの2割で「引っ越し」を付加的に出す程度。中古品買い取りには、意外なところからの需要が舞い込んでくる。
独居の高齢者が入院したり施設入りする際、身内がいなければ家財の整理依頼が市役所などから入る。「残りのものは整理して」と依頼を受けた役所などが、中古品扱いにノウハウのある、この事業者に依頼することがままあるという。
事業者は「必要なものと不要なものは本人でなければ分からないが、価値あるものかどうかは中古品市場に聞いてみないと分からない。われわれの存在意義はそこにあると思っている」と話している。この記事へのコメント
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