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    ルール無視より運転者の育成を

    2009年12月2日

     
     
     

     トラック運送事業は現場のドライバーの労働力によって成り立つ。しかし、経営者の方針でドライバーに対する会社の扱いは大きく異なる。
     社会保険・雇用保険の未加入、膨大な過重労働など、ドライバーは使い捨てといわんばかりの扱いをしているケースもある。


     景気が悪いことを、社会保険未加入の免罪符のようにいう経営者がいる。反対に、公正なルールの下で競争するために取り締まりを強化してほしいという経営者もいる。厳しい経営環境に置かれているのは、どの運送事業者も同じだが、経営に対する考え方がまったく違うのだ。
     不景気が長引いているために、「こういう厳しい時代だから、社保未加入やルール無視も仕方ない」という同情の声も聞かれる。しかし、適正なルールのもとで事業を行っている運送事業者も多くいる中で、そうした意見は一部でしかない。
     300社以上の経営指導をしてきたという運送業専門の経営コンサルタントは、「今は足元を見ることが大切」と話す。「たとえば、社会保険未加入でなければ事業を継続できないような荷主の仕事を、果たして続ける意味があるのかを考えるべき」と指摘する。
     このコンサル自身もドライバー15人ほどの運送会社の経営を預かり、この不況の中、1年で売り上げをV字回復させた。その中心はドライバーの質と労働力の向上だ。

     「ドライバーは宝であると同時に、会社を食いつぶすこともある」と同コンサル。この運送会社は以前、残業手当を不適切に支払っており、わざと仕事を遅くして帰った方が給料が増える仕組みになっていた。これを改善し、給与体系をすべて見直した。残業手当は廃止し、代わりに洗車や会議参加など各業務にポイントをつけて評価する、仕事の実績に即した公平な給与体系に変えたのだ。
     一人ひとりと対話し、新たな給与体系を理解させながらドライバーの質を高めていった。さらにユニフォームの新調や、社内新聞を発行するなどドライバーの励みになる仕組みを整えた結果、業績はV字回復した。
     教育はすぐには成果が出ない。しかし、まじめにドライバーを育てていくことが、品質と業績の向上につながった例は多い。ドライバーを犠牲にして会社を存続させるのか、ドライバーを育てて会社を存続させるのか。経営者の資質が問われる。
    (千葉由之記者)

     
     
     
     

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