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物流ニュース
大丈夫ですか?インタンク
2010年3月12日
「問題が大きくなってからでは遅い」。
運送事業者や協同組合が保有する自家用給油設備、いわゆる「インタンク」に潜在していたリスクが顕在化しようとしている。埋設してから30年以上経ったものも多いが、適切に管理されていない施設が散見されており、消防署からの立ち入り検査で、不備を指摘されるケースが増えている。
漏洩した際の被害が甚大になるため、消防庁では、消防法第14条の3の2で地下タンクの定期点検について規定。設置後、15年を超えた地下タンクは原則として年に1回、15年未満のものやタンクが二重構造になっているものは3年に1回の漏れの点検を義務付けている。
許可取り消しや使用停止命令などの行政処分に加え、30万円以下の罰金または拘留という罰則規定もある。
ここまで厳しく規定されているのも、漏洩した際の被害が甚大になることが予測されるからだ。しかし、危険物施設からの漏洩事故は年々増えており、なかでも、腐食や劣化によるものが事故全体の3割以上を占める。目視できる屋外タンクと違い異常を発見しにくいため、腐食や劣化が原因の漏洩事故のうち、約6割が地下タンクや配管が原因という調査結果も出ている。
消防庁危険物保安室の加藤晃一課長補佐に話を聞くと、「老朽化したタンクは、漏洩を検知できるタイプに入れ替えてもらうのがベストだが、難しい場合は、応急処置として、タンクの内側にFRP(繊維強化プラスチック)の皮膜を貼り付ける『FRPライニング』で補修してほしい」とする。
この『FRPライニング』とは、タンクの内側にFRP(繊維強化プラスチック)の皮膜を貼り付けるというもので、財団法人全国危険物安全協会が施工業者を認定しており、協会HPでリストが公表されている。
想像を超える土壌回復費用
土壌汚染の問題も深刻だ。ある事業者は、「周囲が畑で、漏洩させてしまうと農作物への影響は避けられず、賠償問題に発展しかねない」と語り、専門業者へ点検を依頼したという。
点検サービス大手の日本エンヂニヤー・サービス(横浜市鶴見区)の星敏男営業部長は、「土地の資産価値がゼロになる」と警鐘を鳴らす。昨今、土壌汚染の調査・報告が土地取引での条件になっていることが多く、売却後に汚染が判明すると大問題になるという。「汚染された土地を買いますか」と訊ねられれば、自ずと答えが出てくるだろう。
土壌の回復費用も想像を超える。「汚染土は産廃扱いとなり、焼却費用はもちろん、運賃や工事費用がかかり、自家タンクで数千万円かかることもある」。同社の卯西康司次長も「ガソリンスタンド(SS)は面積も広く、莫大な修復費用がかかる。廃業したSSが放置されているのは、浄化・修復にかかる費用が土地の売却益を上回っているから」と付け加える。
漏洩問題が深刻化しているため、SS事業者には経産省がタンク入れ換えなどに助成を行っていたが、「揮発油(ガソリン)の販売業者が対象で、軽油は対象外」(資源エネルギー庁石油流通課)。
物流業界では、全ト協が平成20年度にインタンクの新設と増設にそれぞれ200万円と50万円を助成。同21年度も1億円の予算を組んでいたが、昨年9月末の申請締切の時点で予算に達している。ただ、この事業はあくまで原油高騰への対策だったため、タンクの修復は対象外。また、「来年度は未定」(全ト協経営改善事業部)という。
「フリート会社が管理しているはず」。そんな声も聞かれるが、燃料販社に話を聞くと、「いまどきありえない」という回答が大半。「タンクの所有権が当社にあるものは別として、管理まで請け負っているケースはほとんどない。昔は給油施設の建設費用まで出して囲い込みを図ったが、利益がほとんど出ない現状では考えられない」。
消防署の立ち入り検査について、「これまで一度も来たことがない」と驚く事業者が多いようだが、市町村の消防本部が独自に方針を決め、管轄のSSや工場、物流施設などを巡回しているため、地域差が生じているようだ。また、SSの廃業が増え、「巡回先が減っているのも関係しているのではないか」と推測する声もある。
インタンクを保有するすべての事業者は、早急に対策を講じるべきと言える。
◎関連リンク→ 財団法人全国危険物安全協会
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