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物流ニュース
思うように進まぬ改善…依頼断れず労働時間超過
2010年11月12日
法令違反に対する罰則強化が進む中、コンプライアンスの徹底を図ろうと努力する運送事業者の姿が目立つ。しかし、中小・零細が大半を占める実際の現場では、法令順守の難しさが浮き彫りとなっている。
適正化事業実施機関では、巡回指導で37項目の指導を行っており、中でも最重点項目として5項目を厳しくチェックしているが、その最重点項目の改善が思うようにいかないようだ。「守りたいのに守れない」というジレンマを抱えながら、事業者らは試行錯誤している。
千葉県の事業者は3年前に労基署の監査が入り、不備を指摘されたことから法令順守へと方向転換した。社会保険加入をはじめ、労働時間の管理徹底や健康診断の実施など改善に努めた結果、Gマークを取得できるまでになったという。
そんな同社だが、どうしても守れない項目があるとこぼす。それは「点呼の実施」。点呼は原則、対面での実施が義務付けられており、実施する人も運行管理者か補助者に限られている。
同社は仕事が不規則で、昼間に動くトラックもあれば夜間に動くトラックもある。実際に点呼を実施するためには、24時間待機しておく必要がある。しかし、「運賃下落で利幅がどんどん減少していく中で、運行管理者を24時間、事務所に貼り付けにして、点呼を実施することは極めて困難」だとし、「現状では、対面点呼を徹底できない状況にある」と打ち明ける。
一方、埼玉県の事業者は、労働時間の管理の難しさを吐露する。同社も法令順守を基本に改善を進めているが、「どうしても労働時間が守れなく困っている」という。
同社は建設資材を輸送する一方で、イベント関連の輸送も手掛けている。イベントは、その性質上、不規則で波がある。「波の低いところに合わせていなければ、コスト倒れで採算が合わなくなる」ことから、最小限の人員とトラックでまかなっているという。 そのため、急なイベントの仕事が入った場合、同社のドライバーもフル回転。その結果、1日の最大拘束時間である16時間を超えてしまうという。
「イベント関連は、本業の建設資材が落ち込んだときに助けてもらった経緯がある。どんな依頼も断るわけにはいかない」と同事業者。どうしても労働時間がオーバーしてしまうという。
両事業者ともに守れていないのは、「点呼の実施」「過労防止に配慮した勤務時間」と、いずれも適正化が指摘する最重点項目。適正化の巡回指導でこうした重点課題の不備が指摘された場合、評価がワンランク下がることになっている。これは、コンプライアンスの徹底を図る両社に大きなマイナスになってしまう。おまけに、重大事故や通報などで国交省の監査が入った場合、最低でも車両停止処分は免れないことになってしまう。
「何とか守りたいのだが…」と改善への取り組みを口にする両社だが、その解決策は見いだせていない。「当面は、だましだまし取り組んでいくしかない」としている。この記事へのコメント
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