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    試用期間を廃止 「期間労働扱い」は有効か?

    2011年5月23日

     
     
     

     「人材派遣会社を作ってドライバーを移籍させ、元の運送会社でトラックに乗務させる。見た目には何も変わらないが、そうしようかとも考えている」と運送社長。一方、「ドライバーを中途採用する際の試用期間を廃止し、いまは期間雇用という扱いに切り替えた」という経営者もいる。両者に共通するのは労使間のトラブルもしくは、それが引き金になる可能性のある行政処分を未然に防ごうという思いだ。こうした手法によって長時間労働や未払い賃金に絡むトラブルを解消または、少しでもリスクを減らすことが果たして可能なのだろうか。


     社員ドライバーを派遣会社に移し、従来の業務に就かせようと考えた広島県の運送会社。社長によれば「社会保険の未加入問題にしてもそうだが、そんなことで営業停止になる商売はトラック運送事業くらい。不規則かつ、長時間労働のうえに成り立つ職種のリスクを避けるためには、自前の従業員という立場を消すことが一つの方法ではないか…そう思った」と話す。
     ただ、こうした思惑は労働行政の担当官が一蹴する。「例えば、36協定を結んでいなかったというレベルの話なら派遣会社の責任になるが、派遣先で長時間労働の実態があるなら運送会社の使用者責任が問われる。要は実体がどうあるかであって、社員ドライバーか派遣労働者かの違いは大きな問題ではない」(地方労働局労働基準部の監察監督官)というわけだ。
     一方、「3か月間の試用期間を撤廃するとともに、採用時に期間雇用契約書を交わすようになった」という岡山県の運送会社。この手法は同社に限らず、話を聞いた兵庫や広島などの複数の同業者でも採用例が見られたが、いずれの会社でも「ややこしい人材を面接で見極めることは難しく、そうかといって『試用期間中』を根拠としてクビにすればモメる原因になる」と過去の苦い経験に基づき、労使トラブルの芽を摘むのが狙いだ。
     広島県の運送会社では過日、「現場ドライバーの大変さを知る立場でありながら、たった10分ほどの早出が『おかしい』として労働基準監督署に相談した内勤社員がいた」という。同社では従来、健康管理の意味もあって始業前にラジオ体操を実施しており、そのために10分早く出社するのが暗黙のルールになっていたという。「あの問題があって以降、従業員の採用に際してはドライバー、内勤の別を問わずに期間雇用の契約書を交わす方法に切り替えた」と社長。 期間雇用にシフトして数年間が経過しているという兵庫県の会社では「労働条件などを面接で細かく説明し、理解できたかを確認するのが基本」(取締役)という。期間雇用契約書には就業規則や賃金規程など面接で説明した項目が箇条書きにされており、最下段に署名・押印の欄が設けられている。「面接時に契約書にサイン(押印)をもらうようにしているのは、働きたい思いが優先している時点だと応募者もスムーズに応じるため。提出を後回しにすれば問題が起きることもある」と説明する。
     こうした期間雇用は正式には有期契約労働者と呼ばれ、契約期間や更新の有無、雇い止めの予告や理由の明示など労働関係法令に沿った対処が事業主に求められるが、契約終了時の対応については「あくまで基本は双方の了解事項。ルールに基づき、客観的な理由がなければならない」と前出の担当官。一方、試用期間は法の解釈上は「解約権留保付の本採用契約」とされるため、運送社長らが話す「いずれは社員として採用される期待を応募者に持たせないため」という意味合いから、期間雇用が労使トラブルを回避する一策と見れなくもない。
     ただ、「だれであっても労使間トラブルの白黒をつけることは不可能」(担当官)との見方があるように、採用時にどこまでの労使合意があったかが重要という。ある社会保険労務士は「試用期間であれ有期雇用であれ、応募者にとっては他社で働く機会を放棄した形。トラブルを回避するには小手先ではなく、労使相互の十分な理解を得ること、そのうえで行政に相談しながら社内ルールを確立する必要がある」としている。

     
     
     
     

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