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物流ニュース
適性診断 「二度手間」不満がる事業者
2011年8月31日
行政刷新会議ワーキンググループによる昨春の事業仕分けで、「民間へのシフト」「各自治体と協力しながら国や独立行政法人(自動車事故対策機構=ナスバ)は手を引いていくべき」との評決結果が示されたことなども踏まえ、今年度からナスバによる「出張サービス」が廃止された適性診断。それに代わるものとしてインターネットを使った診断システム(ナスバネット)の普及を急いでいるが、「ト協の支部などに設置された機器を使おうが、自社で受診機器を用意しようが結局、初任や適齢などの法定受診には対面式のカウンセリングが別に必要。余計なカネをかけて、二度手間は変わらない」とトラック事業者。その一方、国交省やナスバばかりを責められないトラック業界の得手勝手な現実もある。
出張診断が廃止されるのを踏まえ、都道府県のト協支部などの出先事務所にはナスバネット機器が設置されている。郊外に事業所を構えるトラック事業者にも不便がないように配慮した形だが、インターネットを活用したナスバネットで診断が完了するのは一般受診のみ。法で義務化されている「初任」「適齢」「事故惹起」などの診断は、対面式のカウンセリングを受ける必要がある。
広島県北エリアの運送会社は「適性診断の専用機器を買えば、今後は会社で受診させることができると聞いた。採用した翌日からトラックに乗せるケースも珍しくないだけに、初任診断は厄介」と社長。一般診断を除き、これまで通りに(ナスバやト協の支所などへ)カウンセリングで足を運ばなければならないことを説明すると、「ネット環境が急速に進む時代なのに、なぜカウンセリングにも通信技術を活用しないのか」と残念がる。
十数台のトラックを抱える岡山市の事業者は、「ナスバネットなどを自前で設置できるのは、少なくとも100台以上を保有する運送会社の場合。ウチのような規模で機器を置いても1年間で何回使うか…飾りになるだけかも」と苦笑い。広島県福山市の事業者は「Gマークを取得・継続するうえでは一般受診は大切な要素。それが頭にある事業者にはメリットだろう」と指摘する。
取材を通して、モニターでやり取りする格好の遠隔カウンセリングを希望する声が複数あった。労務問題のカウンセリングに当たっている広島市の関係者も「事務所を構えるコストが抑えられるのもメリット」と話す。
ナスバによれば、「(ネット活用によるカウンセリング業務を)検討したこともあるが、運送会社にカメラ設置などで新たなコスト負担をかけるうえ、安定したネット接続が可能かという問題もある。対面なら20分で済むものが、通信環境によって1時間以上も要してしまうなら業務に支障が出る」(安全指導部)と説明。
また、「24時間・365日対応の(ナスバネットによる)測定業務と、(多くの申し込みがあるわけではない)カウンセリングを同じ扱いにはできない。それに、利用者から(通信カウンセリングなどの)要望が届いていないので…」(同)という。
国交省では「インターネットを活用したカウンセリングがダメといっているわけではない。やり方を聞いて妥当と判断すれば認めるかもしれない」(安全政策課)と柔軟な構え。ただ、ナスバと同様に「適性診断を実施している機関・団体などからの相談が一切ない」と補足する。
通信カウンセリングの実現を「安全対策に多くのコスト負担を迫られている運送現場が不満を漏らしているだけ。そもそも適性診断を完ぺきに受診させている事業者は何パーセントいるのか」(神戸市の運送会社)と揶揄する向きもある。この記事へのコメント
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