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    運転中に意識失うも診断書は「支障なし」 解雇もできず

    2011年9月27日

     
     
     

     「いつ意識を失ってしまうかわからないドライバーを、会社側はどう扱えばいいのだろうか」――こんな悩みを抱えるトラック運送事業者が増えている。中国地方の運送会社で過日、仕事中に意識を失って救急車で病院へ運び込まれたドライバーが、その後に「業務に支障なし」と書かれた医師の診断書を提出してきたことで対応に苦慮したケースも、その一例だ。ドライバーの健康状態を把握することは運送会社にとって最優先すべき責務で、仮に怠った場合は重大な行政処分に直結する。ただ、安易に病気を理由として解雇もしくは、乗務停止などに踏み切れば「不当解雇」「不当労働行為」として深刻なトラブルへと発展する可能性もあり、トラック事業者は板挟みの状態となっている。


     「なぜか(トラックの)左側ばかりを傷付ける自損事故を起こしていたが、後で軽い脳梗塞であることがわかった」(広島市の運送会社)、「意識が飛んで、どうやって車庫まで戻ってきたかわからないというドライバーがいた」(岡山市の運送会社)など近年、健康面に不安を抱えたドライバーの話を聞く機会が増えた。仕事中に意識を失い、そのまま救急車で病院に運ばれたドライバーによって、所属する同地方の運送会社は「初めての経験」をしたという。
     「脳波検査や頭部MRIで異常は見つからず、担当医師の判断は自律神経系の突然の失調が原因とされる『血管迷走神経反射による一時的な発作』で『仕事に問題はないと考える』というもの。その診断書をドライバーがもらってきた」と同社の社長。
     ドライバーは医師に「トラックの運転者」であることを告げたと話しており、それを踏まえた医師の判断となるが、運送会社とすれば不安はぬぐえない。「念押し」する意味で、深夜勤務をともなう長距離ドライバーであることを重ねて説明し、それでも就労に支障がないという診断書がほしい…という趣旨の電子メールを医師に送信。それが届けば職場に復帰させ、医師が「NO」なら退職を含めて話し合うつもりだったが、数か月たった現在も医師からの返事はない。自宅待機のドライバーは国の傷病手当金で暮らしている状態という。
     こうした事態に直面した場合、運送会社はどう対応すべきなのだろうか。医師の診断書を信頼して乗せ続けた結果、重大事故につながれば国交省から「健康状態の把握」についての厳しい追及は免れない。一方、会社が退職を促したとなれば「不当解雇」といったトラブルに見舞われる可能性も否定できない。
     国交省では「事故を未然に防ぐために(運転に危険要素のあるドライバーの乗務を)辞めさせたいという運送会社の思いは理解できるが、そうした問題について話す立場にはない」(自動車局安全政策課)と説明。
     そのうえで「法令違反による行政処分うんぬんという問題の以前に、どういう管理をしていたかという点が重要。定期的な健康診断は企業の責務として最低限のものであり、(診断書で大丈夫とされている同ドライバーの場合など)それぞれに応じた細かな対処を講じなければならない」と話す。
     一方、厚労省によれば同種の問題は「地方労働局の企画室が窓口」と説明。地方局に聞いてみると「複数の医療機関から診断書を取るべきだろう。ただ、それで『問題あり』と示されても解雇には相当な理由が必要。ドライバーとして採用したなら、安易に職務内容を変えることも問題となる場合がある。基本は医師を交えて会社、本人の3者で十分に話し合うことが大切。こじれた場合は紛争解決制度などを活用する道もある」(労働相談員)と指摘する。
     労働問題に詳しい弁護士の話では、「平和的な話し合いが基本」と指摘。そのうえで「患者の仕事内容を十分に理解しないまま、本人(患者)の希望も踏まえて診断書を書くケースがある。『特殊な仕事であること』に触れたうえで、あらためて診断書を書いてもらうのも一策だが、(産業医など)かかりつけの医師に診察してもらうなど、より多くの判断を仰ぐことが大切ではないか」という。

     
     
     
     

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