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    大学院生が運送業界の現状を調査「市民の認知が先決」

    2011年11月9日

     
     
     

     摂南大学経営学部の「羽石研究室」(羽石寛寿学部長)は、運送業界の労働環境などについて実態調査・研究を行っている。
     同研究室に在籍している稲元洋輔さんは今春に大学院に進み、調査研究を続けているが、トラック運送業界の現状について「十分な運賃を収受出来ておらず、ドライバーが労働時間を超過しても、給与・賃金に反映されない」と強調。「公共・公益性が強く、市民生活に直接影響する業界。市民レベルから問題を持ち上げていく必要があり、市民に現状を知ってもらい、認知してもらうことが先決」と訴える。
     稲本さんは大学4回生にあたる昨年、羽石研究室の5人の学生とチームを組み、運送業界の現状について調べるため、大阪府を中心とする運送会社24社(従業員数498人)にアンケート調査を実施して研究。2月に卒業テーマとして「運送業界におけるドライバーの実態調査」と題した論文を作成した。


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     従業員意識調査で、自分の仕事に対する関心度は他の一般産業13業界に比べて一番低いことを報告。労働環境は24社中、唯一調査に応じた大阪府内のA社で実態を調べている。A社は8t車の乗務員(地場運行)の拘束時間が月平均346時間となり、国で定める限度の293時間、労使間協定で認められる320時間を大きく上回っている。10t車乗務員(同)でも平均333時間に達した。
     また、車種別の年間労働時間は2t=2662時間、4t=2546時間、8t=3014時間、10t=2876時間で、厚労省が発表している運輸業の基準2085.7時間を大幅に超過していることを指摘している。
     届け出運賃と実勢運賃のかい離も調査し、8割に満たない運賃で運行し、6か月間の合計届け出運賃と合計実勢運賃の差が2913万円あることを明らかにしている。
     稲元さんは調査研究について、全国の各大学(学部)が集まって開催された「工業経営学会」で発表したが、「大手の運送会社のドライバーではなく、大手から仕事を請け負っている、中小・零細企業で働くドライバーに絞っての研究結果で、様々な問題が浮き彫りになっている。仕事に『満足』を感じることが出来ず、労働意識の低下につながっているのは、業界が過当競争にあり、荷主との運賃交渉で弱い立場に立たされ、十分な運賃を収受出来ていないことと大きく関係している。労働時間超過でも、給与・賃金に反映されていない」と説明。
     「運送業界だけで改善していくのは限界にあり、再度、規制を見直す必要がある」とし、「規制緩和ブームで過当競争に陥った業界は他にもあるが、タクシーや建築業界は規制強化に向いている。アンケートを通じて実感したが、自分たちで何とかしようという気持ちに欠けており、業界自身にも責任がある」と苦言を呈している。
     現在、稲元さんは兵庫ト協東部支部と協力し、トラック事業の現状と問題点について調査を進めており、また、一般市民に対しての「物流・運送業界への意識調査票」を1000部作成し、調査に取り組んでいる。

     
     
     
     

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