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物流ニュース
「SOLAS条約」改正の動き 船積み前の重量計測義務化へ
2011年12月9日
「海上における人命の安全のための国際条約」(SOLAS条約)の「貨物の運送」に関する一部規約を改正しようと、世界が動き始めた。SOLAS条約は、コンテナの海上輸送の安全確保のため、発荷主に「重量情報を含む貨物情報を船長に申告する」ことを義務付けている。しかし、現実に申告される情報の多くが不正確で、輸送の安全に支障をきたしており、IMO(国際海事機関)では「船積み前の重量計測を徹底すべき」との議論が開始された。
経済・産業界の猛反発もあり廃案となった、わが国の国際コンテナ法案(国際海陸一貫運送コンテナの自動車運送の安全確保に関する法律案)の国会再提出を望む関係者にとって福音となりそうだ。
11月14日に国交省で開かれた国際会議の報告会(非公開)で海事局が明らかにしたもので、IMOは来年9月、DSC(危険物、固定貨物およびコンテナ小委員会)のワーキンググループで改正に向けた本格議論を開始。2014年5月にMSC(海上安全委員会)で改正を承認、12月までに採択した後、「2016年6月には発効させたい」としている。
SOLAS条約は、1912年のタイタニック号の海難事故をきっかけに作られた。現在、日本も含め外航海運を営む国のほぼ100%、161か国が加盟する。
ところが最近、船長に正確な貨物情報を伝えなければならないのに、それを守らないケースが目立ってきた。特にコンテナ重量は、サプライチェーン(SC)の中で料金の重量換算が発生することから、重量を低目に偽って申告する荷主も増え、問題化している。「5トンというから上部に積んだところ実際は30トンもあり、バランスが崩れて落下した事故も外国で起きている」(国交省海事局)。
申告とかけ離れた重量でも船積みする際には分からない。また、コンテナ船は大型化しており、直前に測定しない限り、排水トンが大きいほど気付かれることはないという。改正で「船積み前に発荷主から船長に提供される情報は、『重量計測を経て正確であること』が証明されたものでなければならない」などの条文に改める。
海コンの安全輸送を巡っては、IMOとILO(国際労働機関)、UNECE(国連欧州経済委員会)の3団体が10月上旬にジュネーブ(スイス)で専門家の会合を開き、「貨物輸送ユニットの収納のためのガイドライン」改正に向けた議論を始めた。国交省からも担当官が出席し、(1)コンテナ情報の伝達(2)コンテナ輸送に係るSC関係者それぞれの責任の明確化――を盛り込むよう訴えた。
安全政策課の担当官は「正に国際コンテナ法案の精神を提案してきた。改正案は来年10月に取りまとめられる。あくまでガイドラインなので法的強制力はないが影響は大きい」と話す。
国際海コン法案を「世界に類例を見ない悪法」と経済界は切り捨てるが、輸送の安全を求める陸上の海コン輸送業者に国際海運の世界から「助け舟」が出てきた形だ。
◎関連リンク→ 国土交通省この記事へのコメント
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