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物流ニュース
北海道の食の物流効率化への実験 品質・コストとも高評価
2012年2月29日
北海道と食クラスター連携協議体物流ワーキンググループ(WG)は1月18日、十勝総合振興局で「積載率向上等による物流効率化モデル実験」の実施報告会を開き、同実験の結果と今後の課題などを協議した。出荷された荷物は4個と少なかったが、物流コスト・品質とも問題がなかったことがわかり、今後も北海道の食の物流を効率化させる事業を継続していく考えを明らかにした。
同実験は昨年11月21日から12月2日にかけて約2週間、行政、荷主、物流企業、地域経済団体、金融機関などが一体となって行った。小ロット加工食品の物流コスト低減を図るため、新しい物流モデルの構築と課題抽出を目的としたもの。物流効率化を図ることで、北海道の食の付加価値向上を目指しており今後、人口が減少し、地域経済が縮んでいく中で、新たな物流体制が必要となるとの問題意識が根底にある。
同実験は、北海道物流開発(札幌市西区)の斉藤博之会長が発案し、制度設計を行った。十勝管内に温度帯別の集荷拠点を2か所設け、荷主に荷物を持ち込んでもらい、道東地域から札幌に戻るトラックを利用して荷物を札幌市・新千歳空港方面まで運ぶというもの。十勝での集荷拠点と札幌での保管拠点をあらかじめ決め、積載率の低い帰り便のトラックを活用することで、コストの低減を図る仕組みだ。
荷主の好きな時間に集荷・配送を行う既存の宅配便をフルサービスの「タクシー」に見立て、それと対比し、荷主に集荷拠点まで荷物を持ってきてもらい、細かい荷物を集めてから運ぶ同モデルを「路線バス」方式と表現。物流コスト低減の可能性との兼ね合いで、荷主には持ち込みの手間が発生し、届け先や到着時間など一定の制約を受けることが大きな特徴だ。
荷物が多く集まるほど、物流コストの低減効果は大きくなるが、「どれだけ荷物が集まるか」が読めない状況でスタート。荷主7社が参加登録し、期間中、4社が各1個の荷物を出した。常温貨物が1個、冷蔵貨物が1個、冷凍貨物が2個となり、配送先は札幌市内の宿泊施設が1個、新千歳空港内の店舗が3個となった。
荷主へのヒアリングの結果、事前の予想通り、「配送先や着時間の制約」「既存の運送会社との契約の関係」「持ち込み作業に伴う負担の大きさ」「リードタイムの長さ」といったことから荷物を出せなかったケースが多かった。半面、荷物を出した4社全てが「輸送した商品の品質に問題はなかった」と回答し、「常温貨物では宅配便と運賃差がなく、冷蔵・冷凍貨物では、設定料金が妥当、あるいは安い」と評価した。
また、報告会では荷主から「ITを活用して近くを走っているトラックの空き状況をリアルタイムで把握し、そこに積んでもらうことはできないのか」「ジャストインタイムに慣れているユーザーにとって、物流コストの若干の低減が、どこまでメリットとなるか疑問だ」「荷物を出す側とすれば価格的には面白いが、荷受け側が嫌がった」「どれくらいのモノがどこに運ばれているかというデータベースがあれば、より効果的な取り組みになる」といった意見が出された。
実験の結果を受けて、(1)冷蔵・冷凍品は妥当または安い運賃設定だった(2)集荷を前提とした生産・出荷体制のため、集荷拠点が近距離であることが必要(3)札幌・千歳エリアへの出荷は受注翌日納品が普通で、これに対応した体制が必要(4)到着時刻の指定に関わる融通性の確保が必要(5)ある程度の貨物量を定期的に出す中核的な荷主の参加が必要(6)小口配送ニーズ全てのカバーは困難なので、宅配便と併用する体制となる、と課題を整理した。
事務局を務める北海道経済部食関連産業室の沖野洋主幹は、「出された荷物の数だけを見て『やはり難しかった』と終わらせるつもりはない。今回の実験を糧にして、トライ&エラーを繰り返しながら、次につなげていきたい」と話し、北海道経済連合会食クラスターグループの石川貴司部長は「色々と問題点を聞くことができ、意義のある事業となった。期間限定の実験ではなく、継続的な取り組みなら荷物を出したいといった声もあった。北海道の共同物流システム構築に向けて、意見を集めながら、次の取り組みを進めていきたい」と述べた。
北海道物流開発の斉藤会長は「効率的な集配体制の考え方のコアを提示できたという面では良かったと思う。小ロットの荷物をまとめることで、いいことがあるとの考えを共有してもらえたのではないか」と述べた。
事務局では、今回の取り組みを知った物流大手から今後の協力について打診を受けており、物流効率化のための継続的な仕組みを構築するために、これからも働きかけていく考えだ。この記事へのコメント
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