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    AIJ問題で「隠れ借金」どうする 苦悩する運送経営者

    2012年3月22日

     
     
     

     「10年後のリスクをゼロにしておきたかった」と、トラック厚生年金基金からの脱退を決めた西日本地区の運送経営者は過日、2億数千万円にのぼる特別掛け金を支払うことで長年の懸案だった「隠れ借金」の帳消し作業を終えた。AIJ投資顧問の問題が表面化するより前の脱退となったが、周囲からは「タイミングが違えば(やめるための追い銭が)さらに多額になっていたかもしれない」との声が聞かれる一方、「やめられたのは優秀な会社であることの証明」というコメントを口にする関係者も少なくない。
     年金基金の脱退は原則自由だが、やめるためには多額の金銭を積む必要があるため、「ルール違反の脱退」が裁判ざたになった例もある。AIJ問題の発覚で、さらに特別掛け金が膨らむ可能性もささやかれる現状が、これまで以上に経営者らを苦悩させ始めている。


     基礎年金(国民年金)と厚生年金の上積みとなる「3階部分」の厚生年金基金は通常、将来の給付額を確定する格好を取る。国が担う厚生年金保険の運用の一部をトラック年金基金などが代行し、それで得た運用益で給付額を上乗せしてきたが、運用環境の悪化による厚生年金基金の財政難が指摘されて久しく、年金基金が抱える「含み損」が、結果的に加入事業所の「隠れ借金」となり、仮に脱退しようとすれば「従業員一人につき100万円前後、なかには同200万円近くを払わないといけないケースも耳にする」と事情通の一人。
     2億数千万円を払って脱退した運送会社の場合、一人当たり100万円弱だった模様だが、社員数が多かったことで総額は跳ね上がった。同社の社長は「年金基金の解散を提案したこともあったが難しいようで、それなら会社として判断するしかないと思った」と説明し、「(年金基金の内容が)改善するかもしれないが、それよりも10年先のリスクを消すことを選択した。与信の問題もあるし、同業者間における競争力の低下を懸念していた」と話している。
     こうした動きが各地で出始め、敏感な反応を見せる運送経営者もいる。パート従業員などにも社保加入が求められることを踏まえ、「否応なしに基金に加入することになるが、いまのままなら業務拡大で増員するたびに脱退時の清算金が増えるわけで、今後の事業計画にも影響が出る」と話す運送社長も現在、真剣に脱退を検討する。「銀行も後押ししてくれそうなので、早い段階で隠れ借金にケリをつけたい」。
     一方、創業から半世紀を数える老舗事業者は「そんな議論を交わせる立場ではない」と、年金基金の役員を務めることで言葉を選びながら話すが、「隠れた借金を返済するために融資が受けられるという意味では、脱退できる会社は極めて優秀ということ。皮肉な話だが、それは現実だ」と吐露。一方、「(正規の追い銭を払わないなど)数年前に全国各地の年金基金で問題になった『ルール破りの脱退行為』に再び目を光らせる必要がある」と、「抜け駆け」に警戒感を募らせる加入事業者もいる。
     資産の運用状況が悪化するなかで近年、代行分を国に返上する例も増えているというが、そのためには代行部分の資産に相当する最低責任準備金の不足分を補てんする必要がある。年金事情に詳しい業界関係者は「目減り分を埋めるために高利回りの運用話に耳を傾けてしまう」と説明するが、現状を危惧する加入企業が仮に脱退を決断した場合、「一人いくら」で計算した多額の資金が必要になる。
     昭和40年代から全国で創設が相次いだことで年金基金の加入メンバーには老舗事業者が多いものの、加入企業はトラック業界でいえば全体の2割前後と見られる。そのために深刻な問題として、これまでクローズアップされる機会は少なかったともいえる。
     機械部品の輸送を手掛ける運送会社社長は「社保未加入の新規事業者と運賃で勝負できるわけがない」と憤る一方、「AIJ問題の広がり次第では今後、さらに一人当たりの(脱退)金額が増える可能性もある。設備投資でもない多額の借金返済を応援してくれる金融機関があるわけもない」と険しい表情で話す。

     
     
     
     
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