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物流ニュース
「運送業で逆転満塁ホームランはない」ロジSP黒澤明社長
2012年5月15日
ハマキョウレックスの大須賀正孝会長が提唱する「日々決算」。物流コンサルのロジスティクス・サポート&パートナーズ(=ロジSP、東京都千代田区)では、これを実運送に当てはめ、「車両別収支日計」としてトラック事業者に導入を勧めている。黒澤明社長は、「収支日計管理に取り組んでいる物流会社のうち、9割が儲かっている。やらない手はない」と語る。
「車両別収支日計」はその名の通り、車両ごとの原価や生み出された利益を日別で管理すること。人件費はもちろん、車両費や運行3費、保険料まですべての経費を計算し、1日あたりの配送原価を算出。予測できる月間売上をもとにした1日あたりの運賃と比較し、利益が出ているかどうかをチェックする。損益がマイナスであれば、その時点で対策が講じられるようになり、経営改善のスピードが向上する。
黒澤氏は、「月次で管理しているようでは挽回できない。日々、利益が出ているかどうかを把握すべき」と指摘。「運送業で逆転満塁ホームランはない。4トン車に20トンは積めないし、日に5回転はできない。『今日の負けは明日取り返す』という考えが必要」と付け加える。
同氏は配送原価コストの算出について、「ゾーンでとらえる」と表現する。「正確性よりスピードが重要。細かな数字にそれほど意味はない。運賃も決まっていなければ仮でいい。財務会計で求められる正確な数字ではなく、その仕事が儲かっているかどうかを知るための『管理会計』の数字でいい」からだ。
車両ごとの損益が明確になることで、ドライバーの成績順位がはっきり出る。「社内の雰囲気が悪くなるという意見もあるが実際はその逆。頑張りを公平に評価できる仕組みが構築でき、働くモチベーションを上げるツールになる」という。
同氏が勧めるのが成績と配車組みの連動で、「今月1番の成績を記録したドライバーが、翌月は1番良いコースを走れる」というもの。「ドライバーに『なぜ俺がこのコースなんだ』と食って掛かられた経験を持つ配車マンは多いと思うが、成績を配車に反映させれば文句の言いようがない。すべて自分の責任」。「あそこは荷待ち時間が長い、あの荷主は積み下ろしを手伝ってくれるなど、ドライバー達はどのコースが1番良いかよく知っている」ため、「しんどくても今月の給料と来月のコースに跳ね返ってくるなら頑張ろうと考える」。
この制度を取り入れた事業者では、「利益を出そうと1個でも多く積もうと工夫し、自発的に2便目を走るドライバーが増えた」という。「いつも夕方に帰ってきていたドライバーが、(2便目を走ろうと)昼過ぎに戻ってくるようになったケースもある。いままでどこを走っていたのかと笑い話になった」とも。
もちろん、人事考課の見直しは必須で、「ドライバーの頑張りを還元する利益配分型の給与体系にするべき」。「俺たちが頑張ったのに『社長がベンツを買っただけ』となれば、不満が増幅してしまう」からだ。「会社にとって辞めてほしくない成績の良いドライバーだけが残る仕組み。成績の悪いドライバーは自然に辞めていく」という。
注意点としては、「ドライバーの性格やライフスタイルを把握しておくこと」を挙げる。「時代が変わり、『ガツガツ稼ぐより定時で帰りたい』という若者も増えている。売り上げは平均的だが仕事はきっちりこなすドライバーもいるはず。稼ぎたいのか、そこそこでいいのか、それぞれの価値観を見定めて配車すべき」とする。
支援システムは980円から
「車両別収支日計」を支援するシステムだが、「残念ながら、既存の運送系システムで活用できるものは見つからなかった」(黒澤氏)。というのも「請求機能と連動しているシステムでは、『ざっくりした数字で良い』、『端数の1円は無視してOK』という『管理会計』の運用はできない」からだ。
そこでロジSPでは、システム開発を「うんそう繁盛net」のロジ・コンビニエンス(兵庫県尼崎市)に依頼。このほど完成し、同社が無料で展開している「スマートロジ」の有料オプションとして提供が始まった。利用料は1台あたり月額980円から。
原価計算やシステム運用が苦手という事業者も多いが、「最初からハードルを上げず、とりあえず始めてみることが重要。まずは1000円単位でもいい」とする。「運賃が上がらず、コストだけが増え続けているいま、やるとやらないのとでは大きく違う。経験と勘による管理ではなく、係数を活かした合理的な計画管理に取り組まなければ生き残れない」と話す。
◎関連リンク→ 株式会社ロジスティクス・サポート&パートナーズ
◎関連リンク→ ロジ・コンビニエンス株式会社この記事へのコメント
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