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    運賃下げず品質を上げる 努力と工夫で黒字継続

    2012年6月20日

     
     
     

     厳しい経営環境を指摘する声が多く聞かれる中、逆境にこそ強みを発揮する運送事業者もある。保有車両三十数台で経営する神奈川県の事業者は、経営者の「意識改革」と「利益を上げる仕組み作り」で黒字経営を続けている。


     この事業者はリーマン・ショックがきっかけで、利益の出る仕組み作りに取り組んだという。会社組織としてのあり方を見直し、管理職のレベルを上げることから始まる。「ドライバーにプロのレベルを求めるならば、管理職もプロであるべきだ」という意識改革が進む。
     会社として「従業員を失業させない」という信念を経営者と管理職が共有。そして何年も先を見越した設備投資や人材育成を進めた。経営者として「ドライバーに『言葉遣いをよくしろ』などと言っていることが管理と思っているレベルじゃダメ」と指摘。仕事も、運賃が安い仕事だけでは会社は長続きしない。「適正な運賃を得て、従業員にも適正な給料を払う仕組みでなければならない」と決めた。
     仕事が減少したので減車はしたが、車両には投資した。全車両にデジタコやバックアイ、カーナビも装備。そして、ドライバーには会社が費用を出して様々な資格取得を進めた。荷主からのあらゆる要求に応えられる体制を作った。
     毎日の対面点呼など運行管理も徹底。一人ひとりに話を聞いて、毎日の安全テーマを決め指示事項を伝える。ドライバー三十数人に対し事務所の人員は9人おり、「これくらいの人員体制でやらないと、ここまでの管理はできない」という。
     運賃を下げることは一切していない。逆に、荷主側の事情で積み込みが遅れた場合などは、時間短縮のために追加の高速料金も請求する。
     値下げしないために、同業他社に行ってしまった荷主もあったが、気にはしなかった。心配する部下には「例え他社に取られても、ウチはこの運賃だ」と言った。安全性や作業効率など自信はあった。やがて、一時的に離れた荷主も他社から戻ってきた。「最終的には価格より、確かな仕事ができるかということだったのだろう」。
     同社の場合、運賃が安い荷主からは離れる方針を取ってきた。安い運賃が安い給料となり、人が離れて育成できず、その結果として差別化も進まず、運賃が安くてもいいから荷を探す──という悪循環から抜けだした。
     周りからは「増車したら」とも言われるが、そのつもりはない。景気で物量が減る可能性があるため、高品質なプロの仕事を少数精鋭で行う会社組織を貫く。同社の事務員に話を聞くと「当社のドライバーは皆、紳士です」と誇りを持って答えていた。

     
     
     
     

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