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物流ニュース
切っても切れない問題 増える健康起因事故
2015年2月6日
健康管理なくして事故防止なしといわれるほど、トラック運送業における健康起因事故が増えている。若い人材が集まらず、高齢ドライバーが増えていく中で健康管理は事業者の最重要課題の一つともいえる。しかし、健康管理はプライバシーという壁もあり、どこまで踏み込んで取り組めばいいか難しいところ。各社の健康管理の実態について聞いてみた。
平成25年度の大阪府内での脳・心臓疾患に関する労災請求件数92件(大阪労働局HP)のうち、トラック運転者を含む運輸業・郵便業は全体の21.7%を占め、全国では道路貨物運送業が、脳・心臓疾患による労災請求件数の多い業種の第1位に上がっている。運送業界と健康問題は切っても切れない関係にある。
大阪府東大阪市の社長は、「ドライバーがインフルエンザにかかると、ただでさえ人材不足なのに会社がまわらなくなってしまう。そのような事態を防ぐ目的で、ドライバーとその家族の予防接種費用を負担している」と話す。費用の全額を会社が負担し、その一部を健康保険組合の補助によって補っているという。
同社長は「運転中の突然の病気が増えていると、ニュースでよく見かけるようになった。社内の目に付くところに、高血圧や睡眠時無呼吸症候群(SAS)などのポスターを掲示し、注意喚起を行っている。社員の健康を気遣う雰囲気づくりが何よりも大切だと感じており、私が率先して健康管理の情報を収集している」と話す。
京都市内の運送社長も、自ら健康問題に真摯に向き合う一人だ。自身の体調の変化から健康の重要性を痛感し、約5年前に社内に小さなジムを完成させた。「私自身が高齢になり、体調を崩して皆に迷惑をかけたくないという思いでジムをつくった。従業員は中高年が多く、病気のリスクは年齢を重ねるにつれて増えている。体調管理は仕事と同じく大事なことだと社員にも伝えている」という。
冬季は心疾患や血圧の上昇、うつ病など、さまざまな病気のリスクが増える。この時期は、自社の健康管理体制を見直す良い機会だ。
大阪市西淀川区の社長は、知り合いが肺がんを患ったことから、社員に禁煙を呼びかけている。「ドライバーという仕事は、健康でなければ続かない。長く快適に働いてもらうために、社内で出来る取り組みを充実させていきたい。今後は、勤務時間以外の健康管理についても考えていきたい」と話す。
大阪市福島区の事業者も、昨年5月から健康管理体制を改め、運行管理者がドライバーの健康状態を把握するためのツールを導入した。長年、健康管理に携わってきた同社常務は、「健康診断を受診させるだけで終わっていたが、診断結果を有効に活用しようと健康に関する情報をデータ化した。運行管理者が変わっても誰でもチェックしやすいようになっている。点呼の際に毎回、病状などを確認することで、ドライバー本人への意識付けにもなっている」という。
平成27年度12月までには、従業員数50人以上の事業者は、労働者に対するストレスチェックの実施が義務となる予定だ。1年に1回の想定で行われ、医師の意見を基に、必要に応じて就業場所の変更や作業の転換など、就業上の措置を講じることも義務となる見込み。今後はメンタルヘルスの管理も課題となるだろう。
健康が起因する事故が増加傾向にある中、健康管理についての社内の取り組みは増えてきているようだが、すぐに効果があらわれるものではないため、つい対策を後回しにする傾向にあった。重大事故につながりかねない健康起因事故。企業を継続していく上で健康管理の対策は時流ともいえる。この記事へのコメント
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