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物流ニュース
新規採用ドライバーの賃金アップで思わぬ事態 古株10人が一斉退職
2024年12月24日New!!
10月から最低賃金が改定された。東京では時給1163円となり、5年前と比べ150円上昇した。一方、トラック業界では、長時間労働の改善というハードルも加わり、それ以上の賃金アップに迫られている。
確かに、全産業と比べ、2割長い労働時間と1〜2割低い賃金を少なくとも全産業並みにしなければ、人手不足の解消には程遠いのも事実で、そのため、採用の入り口で賃金の引き上げを行う事業者の姿がある。
しかし、今度はそれが逆に社内に不和を生み、混乱を招く事態に陥っている事業者もある。
首都圏の運送事業者は、ドライバー採用に四苦八苦しており、あの手この手で求人を行っている。他社や他業界との差別化を図るため、時給単価の引き上げを実施、採用入口での賃金アップを図ったという。
「この効果が表れ、徐々にドライバーを採用できるようになってきた」が、今度は違った問題が発生してきたという。
同社では荷主と運賃交渉を行っているが、なかなか値上げには至っていない。そのため、既存ドライバーの労働時間の改善は進めているが、賃金を上げるところまでは手が付けられていないのが実情で、新規に採用するドライバーとの賃金の差がなくなってきている。
まだ大きな問題となってはいないようだが、「既存ドライバーから不満の声が聞かれるようになってきた」という。「一刻も早く対処しないと、大事になる」と気が気でない様子の同社社長だが、荷主との交渉が停滞するなか、既存ドライバーの賃金アップに頭を悩ませている。
一方、すでに影響が出ている事業者もいる。同じく首都圏の事業者では、10人近いドライバーが退職。理由は、新規採用のドライバーは厚遇するが、既存ドライバーにはそれがないというもの。既存ドライバーが反発し、同社を去った。
「辞めていったドライバーの気持ちもわかるのだが、賃金を上げれば会社が継続できなくなる」と、苦しい胸の内を明かす。とはいえ、人材確保が困難になるなか、給与水準を引き下げるような、新規採用の入口を狭めることはできない。
新人を優遇すれば古株が怒る。古株を優遇すれば新人を採用できない。「適正運賃まで引き上げるしか道がないのは分かっているが、それができればとっくにやっているし、苦労もしない」とこぼす同社長は、解決策を探すため、思案を巡らせている。
最低賃金は毎年改定されており、平成16年の東京都の時給は710円で、大阪府は704円、愛知県は683円だった。10年後の平成26年は、東京888円、大阪838円、愛知800円となり、さらに5年後の令和元年には、東京1013円、大阪964円、愛知926円となり、東京は1000円台の大台に乗った。
さらに今年は東京1163円、大阪1114円、愛知1077円と、都市部のほとんどで1000円台を超えている。
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