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    中継輸送、普及するか 中小事業者の課題は

    2015年9月3日

     
     
     

     国交省は、若年者や女性などの多様な人材の確保に加え、長時間労働による過労運転防止の観点から、特に長距離輸送において複数の運転者で分担して運送する「中継輸送」の導入を推進している。中でも、中継地でドライバーがトラックを乗り換える手法は荷役作業が不要のため、ドライバーの負担や荷物の損傷を軽減する効果が期待されている。すでに路線事業者の間では実施されているが、実現のためには事故が起きた場合の責任や損害賠償事項を定めておくだけでなく、資本的な問題や労務管理、安全対策のレベルが同じであることなど、条件をそろえる必要がある。今後、中小事業者にも普及する余地はあるのか検証してみたい。
     国交省自動車局安全政策課と貨物課は6月26日、現行制度による具体的な実施方法を「貨物自動車運送事業における中継輸送に関するQ&A」にとりまとめ、公開している。これによると、異なる事業者間で中継輸送を行う場合、「貨物自動車運送事業の用に供する事業者用自動車の相互使用について」(平成9年7月1日)の通達に基づき、運行管理、車両管理及び事故の処理について相互の責任関係や損害賠償に関する事項を当事者間で協定書などに定めておくこととしている。


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     これまで積み替えによるリレー輸送を行ってきた埼玉県の中小物流事業者も、この制度が発表された当初から導入を検討してきた。ただ、「保険の問題がクリアにならなければ導入は難しい。それならば、仲間とコンテナを共有しトレーラ輸送した方がよいのではないか」と模索している。
     なぜ、頭を悩ませるのか。それは自社の車で他社のドライバーが事故を起こした場合、実際には、車の所有者の保険が適用されるからだ。「他社の事故で自社の保険料が上がり、しかもその保険料が全車両に適用される。それだけのリスクを負ってまで行う必要があるのか」。
     A社のトラックをB社のドライバーが運転する場合、「事前の協定でA社の保険に免責金額(自己負担金)を100万円で設定し、免責金額まではB社負担にすることや、免責金額以上の損害賠償は一定割合で応分することも理論上可能」と、保険サービスシステム(東京都千代田区)の馬場栄氏は説明する。このケースで事故が起きた場合、過失割合に関わらず免責金額まではB社が負担しなければならない。なお、免責金額を超える損害賠償が発生した場合、A社は保険を使うか否かの選択が求められる。例えば、300万円の事故が発生し、A社とB社で免責金額を超えた部分は過失割合にかかわらず50%ずつ負担すると協定していた場合、A社は100万円、B社は200万円の負担となる。
     ただし、中継輸送用のトラックであることが前提となる。「中継輸送の仕事がなかったとき、A社は空車にしておくか。普通なら寝かせない。そうすると『A社で使用』となるため、事故が起きれば免責金額もA社の負担となる」と馬場氏。A社、B社、保険会社の間では「中継輸送の時はB社の保険を使う」としているにもかかわらず、A社の業務時に事故が起きた場合、B社の保険を使う。問題は、それによって保険料が上がりB社が使わせてくれるかどうかだ。
     馬場氏は「約款を改正し、『限定した使い方をする場合は、A社もB社も1台の車にかけることができる』とすればできなくもない」というが、現行の保険約款では「A社の車にB社も保険をつけるという考え方はできない」と指摘する。
     もし約款を変えることができたとしても、例えばA社とB社が兄弟会社でA社は大型車を、B社は小型車を多く所有している場合、同じように4トンの車に2社で保険をかけたら、事故が起きたときAの保険を使うと、高い保険料がほかの車にも影響するため、「今回はBに」ということもできてしまう。ましてや1台の車に3社が関われば、さらに公平性が失われてしまう。
     馬場氏は「今の段階では、1台の車に2社が保険をかけることは想定できない」という。「A社の所有だがB社のドライバーが乗るため、B社が保険をかけるということはできるかもしれないが、A社はかけられない。つまりA社の車両は中継輸送以外の仕事はできないことになる。とはいえ、中継点まではA社が配送を行うので、その間で事故が起きた場合にB社が納得するかという問題は残る」と指摘する。
     前述の例で考えると、B社の負担は免責金を合わせて250万円となる。現金で200万円を支払っても、それ以上の利益を上げられるならばよいが、1運送あたりの売り上げを考えると、せいぜい2万5000円。100万円の事故を起こしてしまったら、どれだけ仕事をこなしても追いつかない。
     「整備不良でブレーキが利かなかった」とB社ドライバーが主張すれば、自己負担の話でもめるだろう。もし、それが本当だとしてもB社が立証できるか。A社が「整備の点検記録をお互い交換している」としても、故障はいつ起こるかわからない。元請けが配下のA社、B社に仕事を流した場合、A、Bが荷物の保険に入っていなければ支払い能力のある元請けが訴えられる可能性も考えられる。
     中小物流事業者が、ドライバーの乗り換えによる中継輸送を行うための絶対条件は、相互間での細かい取り決めを前提の上、「資本的に耐えうるのか」協力会社との間に力関係がある場合、支払い能力のあるところが訴えられやすいので「労務管理を同じレベルで行っている」「一緒に安全大会を開催してレベルアップを図っている」などの対策が必要であるといえる。
     自動車局貨物課が秋口をめどに行う実証実験では、対象を中小物流事業者とし、異なる事業者間で中継輸送を行う場合の課題を抽出したい考えだ。その際、「できるだけ設備投資の少ない方法を模索する」としている。

     
     
     
     

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