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物流ニュース
輸送実態のアンケート調査実施 現状報告の好機
2015年10月21日
平成31年4月1日の労基法改正にむけて、厚労省と国交省が連携し、トラック運送事業の取引環境・労働時間改善のための協議会を中央と各都道府県で開催している。9月14日からは輸送実態のアンケート調査が実施される。しかし、事業者からは「回答が監査や処分に使用されるのではないか」「個別の事業者名を公表されるのではないか」という不安の声もあり、国交省自動車局貨物課では8月17日、貨物課長名で文書を発出。監査や処分に使用しないことを明記するとともに、労働環境の改善実現のため、ありのままの状況を回答するよう呼びかけている。
「労働基準法等の一部を改正する法律案」の閣議決定で、月60時間以上の時間外労働に対する割増賃金率について中小企業への適用猶予(25%)を見直し、平成31年4月1日から50%に引き上げられる。これに伴い、長時間労働の抑制に向けた環境整備を進める必要があるが、トラック運送業では「荷主都合による手待ち時間の発生など、事業者単独での改善は難しい」として、関係行政機関や関係団体との連携のもと協議会を開催。4年をかけて改善に取り組むこととされた。
同14日から実施されるトラック輸送の実態調査では、選定された事業者に調査票が配布されているが、東京のある支部では事業者の理解を得るのに時間を要したという。支部事務局が長距離をメーンとする事業者に協力を要請したところ、「監査に使用されるのではないか」と、当初は首を縦に振らなかった。同事業者は「行政=監査が脳裏にちらつく。そのイメージは根深く、取り払うには時間がかかる」と話しており、事務局も「法改正の背景や趣旨の情報に乏しく、現状の労基法を守れていない事業者ほど不安度が高い。なぜ今、この調査が必要なのか理解できていない人はいる」と調査にあたっての印象を語った。
調査は東京、大阪、愛知は30社(1社につき5ドライバー)150事例、そのほかの地域は20社100事例が集められる予定。東京では25支部から1社ずつ選出し、これに加えて東京港での待機時間が問題視されている海上コンテナ事業者からの5社を合わせた30社で実施。埼玉では、輸送品目ごとに選出。「特殊(プラント)」「海上コンテナ」「食品」「紙」「建材」原料や一時輸送などの「製造・製品」の中から事業者をランダムにピックアップし、運輸支局主催の事前説明会を開催。全ト協の職員から調査の意図などが説明された。
監査や処分の対象になる? 行政は文書で否定
業界に走るインパクトを国交省も把握しており8月17日、貨物課長名で文書を発出。その中で、今回の調査の重要性を説明している。調査の目的は、「特定の事業者を指導・処分することではなく各都道府県または全国的な傾向を把握することにある」とし、「厚労省も国交省も調査結果を見て監査に入ったり、個別の事業者名を公表するということは絶対にしない」と、安心して回答するよう明記。また、本紙取材では、調査結果は「各ト協で集計し、全ト協で取りまとめられてデータ化されるため、行政の手に渡る際には、どの事業者のデータであるかは分からない」という。
さらに、「今回の調査は、今後4年間の検討の出発点となる大変重要なもの」とした上で、実態と違う内容で回答した場合、日頃言われているほど大変な状況ではないなどと誤認されてしまうと指摘。そのため、ありのままの状況を回答するよう呼びかけている。
アンケートで自社の現状をさらけ出すことで恥をかくこともあるかもしれない。しかし、その一時の恥が将来、トラック事業を担う後進たちの未来をつくることにつながる。
自動車局貨物課・祓川直也課長「どれだけ本気になれるか」
中央協議会では全体の基本的な方針を決定し、舵取りを行うが、地方については各都道府県関係者の方がよくご存知だと思う。各地の実態に沿った取り組みが行えるよう、会議の進め方や委員構成は地方労働局や運輸局、ト協の裁量に任せた方が建設的な議論ができるものと考える。やり方はそれぞれあってよいと考えており、(本省に)上がってきたデータを、その地域の傾向として理解するつもりだ。
協議会は「トラック輸送適正取引推進パートナーシップ会議」を改組したものではあるが、前例にこだわる必要はないと考えている。必要があれば荷主や物流事業者から新しい委員を迎えたり、関係者ヒアリングとして、その都度、意見を聞くことも可能。やりようによってはいろいろなことができるはず。労働局・運輸局・ト協が連携し、どれだけ本気になって取り組めるかどうかで状況は変わると信じている。
◎関連リンク→ 国土交通省この記事へのコメント
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