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    労使トラブル 就業規則・賃金改定の見直しだけでは不十分

    2016年1月20日

     
     
     

     労使トラブルの増加を背景として、運送業界も就業規則の見直しや賃金規定の明確化に着手する事業者が増えてきた。しかし、ただ規則を見直すだけではリスク対策としては十分ではない。就業規則や賃金の明確化を行っていたにもかかわらず、労働審判で不利な立場に立たされるケースもある。
     今春、千葉県の運送事業者A社に1通の通知書が届いた。数か月前に退社したドライバーの代理人を名乗る弁護士からだった。
     内容は、平成24年11月から平成26年11月までの残業代、深夜手当、休日手当などの未払い賃金約1000万円の支払いを求めるもの。同社はコース給制度をとっており、コースごとに定められた日給額には、残業代や深夜割増賃金が固定残業代として含まれている。元ドライバーの主張は、「就業規則や賃金規定を見たことはなく、所定時間が何時から何時までなのか、残業代はどのように支払われるのか、どんな手当が支払われるのか説明がなかった」というものだったが、「そんなはずはない」とA社長は言う。数年前、同社のグループ会社が労基署から是正勧告を受けた。この指導を機に、同社ではコース給一覧に「給与対象時間数」の欄を設け、「普通時間」「残業時間」「深夜時間」の各時間の割り振りを明記した。一覧を営業所に掲示し、営業所長を通じて各運転者に閲覧するよう指示した。


     千葉地方裁判所で労働審判が開かれたが、両者は真っ向から対立。元ドライバー側は「就業規則や賃金規定の存在は知らされていなかった。コース給一覧は退職後に作成されたもので、自分は見たことがない」と主張した。協議は平行線を辿り、A社は訴訟に移行して徹底的に争うことも考えたが、「裁判になれば、厳しい判決が下る可能性が高い」という専門家のアドバイスを受け、思いとどまった。
     同社では勤務時間が長時間化しており、裁判となれば勝算は少ない上、莫大な付加金が発生する可能性があるからだ。現在も和解に向けて労働審判が続いているが、先行きは明るいとはいえない。最終的に和解金の額がいくらになるのかは今後の協議次第だという。
     A社の最大の失敗は、就業規則や賃金規定を確認してもらった際に、従業員から合意の署名をもらっていなかったことだ。労働問題に詳しい岡正俊弁護士(狩野・岡・向井法律事務所)は「争われた場合のことを考えると、就業規則や賃金規定を見ることができるようにするだけでは十分とはいえない。内容を理解してもらい、自署や確認印をもらうだけでも状況は違ったのではないか」と指摘する。また、A社が不利な立場に立たされた別の要因には、「弁護士の専門性」の問題が存在する。当初、A社の代理人を務めていた顧問弁護士の専門は交通事故。労働問題に関しての経験が浅く、労働審判では押し負ける形になった。A社長は、知人を通じて労働問題に詳しい弁護士を紹介してもらい、3回目の審理から新たな代理人としたが、状況を覆すことは容易ではない。日頃から労働問題に詳しい専門家に相談できる機会があれば、就業規則の運用についても十分な対策を講じることが出来たかもしれない。
     残業代未払いなどの労働審判が起こった場合、ほかの従業員に影響を与える可能性もある。「就業規則や賃金規定に定められたものが労働条件となるためには、それらの規則や規定が周知されている必要がある」(労働契約法第七条)との定め通り、せっかく整備した規則や規定がうまく機能するためには、一歩進めた対策が求められる。

     
     
     
     
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