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    交通事故減らす「KM理論」 本能理解した防止策

    2018年4月19日

     
     
     

     あおり運転、合図不履行、突然の割り込み、直進車の前に突っ込んでくる右折車。いずれもギリギリで事故にはならなかったケースだが、車を運転しているとヒヤリとする場面に出くわす。警察庁の発表によると「安全不確認」「脇見運転」「最高速度違反」が事故原因の上位を占める。法令を順守する運送事業者が増し、安全運転のトラックが増えてはいる。しかし、すべての運転者が事故をなくすための運転をしなければ、安全への道のりは縮まらない。他人の命を危険にさらしてまで、急がなければならない用事があるのか。なぜ、先を急ぐ危険運転が横行するのか、その理由について、40年にわたり交通事故防止の研究をしている九州大学名誉教授の松永勝也氏は「原始からある一つの本能が原因といえる」と指摘する。

     人類は生存し続けるために、競争を繰り返してきている。人口に対して食料が少ない環境で生き残るには、人よりも先に食料を獲得しなければならない。また、敵から逃れ命を守るためには、より速く移動できなければならない。「他者よりも速く移動できる者が生き延び、その特性が本能として受け継がれてきた。この『先急ぎの本能』が、運転においても影響を与えている」と同教授は指摘する。

     信号が青に変わる瞬間、誰よりも先に前に進もうとした経験や、追い越しをかけてきた車に気づき、スピードを上げた経験は多くの人が持っている。これらの行為が本能によるものだとしたら、どうすれば事故をなくす運転ができるのか。同教授が提唱するのは、本能を理解した上での事故防止策「KM理論」だ。長年の研究により、事故の発生要因が、この「先急ぎの本能」と「停止距離の突発的な延長」にあると分かったという。

     停止距離の突発的な延長とは、ブレーキを踏むべき事象が発生しても、それに気づくのは常に一定ではなく、遅れが生じて停止までが長くなってしまうことである。先急ぎの本能により、その停止距離よりも短い車間距離で走行していると、衝突することになる。「突発的な気づきの遅れは防止できないため、停止距離が長くなっても衝突しない車間距離を保持して走行する必要がある」と同教授。

     ところが例えば、運送業界の現場では、割り込みや到着遅れによる荷主からの叱責などを理由に受け入れない運転者も少なくないという。そこで同教授は実験で、速度が到着時間に影響するのかを検証した。区間は福岡市箱崎の旧九州大学のキャンパスから西公園の区間、約7キロの距離だ。40キロから70キロまで10キロごとの速度別に測定したが、到着時間はわずか2分程度の差しかなかった。

     「危険をおかして車を飛ばしても、ほとんど変わらない。さらに、安全な速度で運行すると、脳の疲労が軽減される」とし、「タクシー業界では、その明らかな違いが売り上げに現れる」という。速度超過での先急ぎ運転では、車間距離が短いために常に緊張状態となっている。疲労のため、長めの休憩を取ることになる。一方、安全運転では疲労が少なく休憩は短くてすむ。結果的に、後者のタクシードライバーの方が長い距離の走行ができ、売り上げも勝るのだ。

     同教授は、「研究の結果、速度に関係なく4秒の車間距離を維持すれば、事故を防げると分かった」という。駐車場内や荷主企業の構内での衝突事故も、先急ぎ衝動が影響している。「発進操作や方向変更操作をしながら安全確認をするのが原因。確認が終わってから運転操作を始める。これを徹底するだけで、事故は格段に減らせる」と同教授は言う。

     先急ぎの本能は生存のためには必要なものかもしれない。しかし、車社会において、その闘争心は生存を不利にする。本能に支配された運転をしないためにも、日頃からの安全運転の習慣づけが大切だ。「スポーツと同じ。突発的に対応できるようになるには訓練が必要。そのためにも、安全な場所であっても、やるべきことをやる。それが安全運転の習慣となる」と、同教授は指摘している。

     
     
     
     
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