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物流ニュース
人件費の上昇続く 人材不足の影響か…
2018年4月30日
人材不足の影響からか、人件費の上昇が続いている。リクルートジョブズ(東京都中央区)の「アルバイト・パート募集時平均時給」によると、三大都市圏の製造・物流・清掃系の平均時給は1015円(全国では986円)で、前年同月比では74か月連続で増加している。構内作業(フォークリフトなどオペレーター)が1166円(前年同月比4・7%増)、ドライバー・配送・デリバリーが1053円(同3・5%増)、物流作業1017円(同3・0%増)となっている。
全ト協の調査によると、5年前の平成25年に従業員10人規模の大型車乗務員の給与は月32万5000円だったが、同29年は35万3200円に増加。小型貨物乗務員でも同25年が30万1000円だった給与が31万6900円となっている。
しかし、給与調査の結果は、調査を実施した団体によってもバラバラで、厚労省が実施した「賃金構造基本統計調査」では、大型・小型の関係なく、運輸業の平均給与は28万3100円。前年比で0・5%減少している。運送業界と同じように人材不足で苦しんでいる建設業でも同1・2%減少、医療福祉業でも1・2%減少している。
この点について厚労省賃金福祉統計室では、「産業界全体で見れば、賃金が上昇傾向にあるのは間違いない。しかし、個々の調査を見れば下がっているところもある。建設業はこの前年に大きく賃金が上がっており、その反動と考えられる。医療・福祉業は今回の調査では医療分野より福祉分野の回答が多かったため、平均賃金が下がったと見ている」と指摘。「運輸業では航空機関係のパイロットの回答が減少した結果だと考えている。この調査は抽出先を固定していないので、回答者が変わると結果も変わる」と説明している。また、「賃金は上昇傾向だが、いつまで続くかは予測できない」とも話す。
賃金が上昇しているとはいえ、他産業に比べて賃金水準が高いとはいえない物流業界。高齢化も進み、大型免許を持つドライバーがどんどん減っている状況では、賃金改善は喫緊の課題と言える。日本人材派遣協会(東京都港区)に、人件費の上昇について話を聞いた。
同協会では「1時間あたりの派遣料金(全国平均)を見ると上昇傾向にある。例えば、機器操作の場合、昨年の1764円から1780円に上昇している」と指摘。「派遣社員に支払う金額がそのまま上昇しているが、業種によってさまざま。事務作業はそこまで上がっていないが、クリエイティブだと30円アップ、製造関係も上がっている」という。
「製造関係は本当に人がいない。供給する人間がいないので、未経験者を供給するしかない。未経験者の場合、それほど人件費は上がらない。派遣社員の中でドライバーを含め運搬・包装などの物流関係は約2割。ドライバーや製造ライン、ITも本当に人がいない状況に陥っている」と同協会。「働き手のニーズは多様で、限定的な働き方を望む傾向にある。例えば、昼間の3時間だけ働きたいというニーズ。若い人は『残業』と聞いただけで、すぐに『ブラック』と考える」と指摘する。
「派遣社員調査では、現在の残業時間がほぼゼロの方が8割を超えている。正社員に誘われても、残業時間が月20時間を超えると、8割の人が断わるという結果もある。1日1時間程度なのだが…。逆に言えば、働く時間や場所を限定し、多様な働き方に対応できれば人は集まる」と説明。「運送会社の場合は、ITなどを導入してオペレーションを変えなければ、人は集まらないのではないだろうか。いくら賃金を上げても、人材確保は厳しい。若い人ほど限定思考が強くなっている」という。
「そういったオペレーションやシステム変化を、中小でも採り入れている企業はある。ある旅館では365日稼働をやめて定休日を導入し、仕事をコマ切れにした。未経験者を雇用して空いた時間を教育に使っている。こうした変化を1日でも早く導入した企業が勝ち残る。仕事の仕方を変えられるかどうか、これからの企業に突きつけられている課題と言える」
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