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    アパレル輸送の効率化 「手積み・手下ろし」に探る

    2018年5月14日

     
     
     

     アパレル全体のパイが減少傾向にあるなか、ネット通販での売り上げは伸びている。こうした状況で、運賃の値上げやエリア限定など、アパレル輸送も大きく変化している。しかし、輸送面での効率化は進んでいないといえる。アパレル輸送では今でも、手積み・手下ろしが基本となっており、パレットなどの利用は少ない。なぜ、アパレル輸送では、手積み・手下ろしからパレットなどでの輸送に転換できないのだろうか。

     ハンガー便輸送を行っているエクセレント急便(岩本憲一社長、東京都江戸川区)はアパレル輸送のほか、検品・検針、補修・縫製などのアパレルに特化した物流サービスも提供している。創業から16年目を迎える同社では、1トン車から4トン車まで全車ハンガー車仕様でアパレル輸送を行っている。ドライバーは9人で、車両台数は16台。洋服をハンガーにかけた状態で運ぶハンガー車は、ラックや箱などをトラックに積むよりも積載効率が良い。そのため、利用者の多くがハンガー車での輸送を希望している。

     岩本社長は「ラック積みはスピードが速くドライバーにとっても負担が少ないが、積載効率が落ちるため、ハンガー車で運ぶよりも車両台数が多くなる」とし、「台数が多くなると運賃がかかるため、利用者の負担が増える」という。利用者にとっては運賃以外にも、箱への詰め込み作業や開梱作業がいらないハンガー車での輸送は、時間とコストを削減することができ、洋服にもシワができないことから要望する声が多い。ハンガー車での輸送は、4トン1台で最低150回の手積み・手下ろし作業が必要となるため、腰を痛めるドライバーも少なくない。岩本社長は「利用者の利便性を考えると、手積み・手下ろしが基本のハンガー車での輸送が現状ではベストの方法」とし、「ドライバーへの負担はあるものの、ドライバーの応募も多いので、何とか需要を取り込むことができている」としている。

     EC通販などの受注・物流・決済・返品業務を行うフルフィルメントプロバイダーのアッカ・インターナショナル(加藤大和社長、同港区)。同社は現在、EC・ALIS(アリス)・ONEの3つの統合したプラットホームによって、アパレル通販のバックヤード業務をワンストップで提供している。加藤社長は「3PLが通販のスピードについて来れなくなっていたので、委託から自前に切り替えた」とし、「それから返品業務のカスタマーサポートを開始。最近ではシステム開発も行っている」と話す。

     同社では、商品在庫を一元管理し、複数の販売チャネルへ在庫連携を可能にするシステム「ALIS」を開発。このことが、ギークプラス(佐藤智裕社長、千葉県印西市)の物流ロボット「EVE(イヴ)」の導入につながった。加藤社長は「我々の物量はどんどん増えている」とし、「BtoBとBtoCを一緒に扱わなければならないなど、作業も複雑化している。こうした状況で、人材の確保も難しいことからロボットを導入。入荷・出荷ともに4倍のスピードアップを実現した」同社ではさらにロボットを入れているのは千葉だけで100台、夏に向けて増設を進めている。ロボットの導入で入荷・出荷ともに4倍のスピードと効率化が進んだ。アリスによって在庫管理ができるので一気に量をさばけるようになり、アリスによって物流が変わった。同社には現在、多くのアパレルメーカーから依頼がきているため、千葉に100台、この夏には川崎のセンターにも100台ロボットを導入するとしている。

     アパレルに特化した物流サービスを提供してきたOPAL(矢野三興社長、同中央区)では昨今、特に取扱量増加が著しいeコマースによるBtoCサービスの多様化対応に力を入れている。現在、寄託業務以外にも撮影スタジオやX線機器を備え、補修加工から撮影などのサービスをワンストップで行い、商品の回転力強化と収益アップに貢献中だ。加えてニューレボ(長浜佑樹社長、同渋谷区)とアライアンス契約した同社では、クラウド型在庫管理「ロジクラ」を活用し、スマートフォンやタブレット端末で伝票バーコード・QRコードを読み取るピッキングが可能。アパレルに加え、他の一般物など多種多様な商品を確実かつ効率良く管理する体制を構築している。

     なお、同社は多くの女性従業員を抱えていることから作業負担軽減にも注力。フリーローラーをトラックバースまで延長し、作業時間と労力の削減を達成している。しかし、営業部の橋野萌生氏は「コンテナでのデバンニングやバンニングには、まだまだ課題が残っている」とし、さらなる改善を見据えている。OPALのこうしたバックアップを受けた企業の中には約3倍の収益アップに成功した企業もある。橋野氏は「私どもが一番大切にしていることは、お客様が今、お困りになっていることだけでなく、潜在的な要素にも目を向けること。企業間で、パートナーとして助け合い、大きな可能性が生まれると信じている。これからもお客様と共に歩み続けたい」と話す。

     昨年7月からスタートした段ボールの共同化や共同配送の実証実験など最近、物流事業の効率化を進めているアパレル業界団体である日本アパレル・ファッション産業協会(同中央区)。遠藤孝顕事務局長に同業界の物流について話を聞いた。「私どもの業界は他の産業業界よりも個性、ユニーク性を大切にしており、ビジネスの根幹はそこにある。その部分が強いこともあり、他社と一緒にできるところまで独自性を出している」という。「洋服のサイズにしても、各社で若干違う。それは各社独自のデザインの違いでもある」という。

     「各社の荷物を配送することを考えれば、段ボールのサイズを統一した方がいい。共同配送についても、他社の荷物を一緒に運ぶ発想がなかった。効率化やコスト削減のためには同じサイズにした方がいいのはわかっているが、総論賛成・各論反対。『ウチの荷物は、このサイズでないと…』ということになっていた」と同事務局長は説明する。「最初は段ボールサイズのアンケートから始めた。皆さんバラバラの回答だった。そこで頻度の高い形を調べると3、4種類。大きさはほとんど同じで、『皆さんで統一しませんか』ということになった」という。共同段ボールを作ろうとした背景には人手不足や運送費、段ボール資材の高騰があった。「私どもの業界は運送会社がなくては動かない。路線会社や宅配会社は必要不可欠。その取引先が人材不足で困っているとなると、こちらも死活問題。一緒に解決できないかを考えることになった」と話す遠藤事務局長。「昨年7月から共同段ボールをスタートさせた。もちろん、昔からお付き合いのある段ボール会社もある。いろいろな事情もあり、最初は十数社。この3月末で約40社が活用している」といい、「以前よりコスト的、品質的に良くなった」という声が届いているという。

     手積み・手下ろしが常態化している業界の現状については、「まずはサイズを一緒にすべき。この問題は荷主側だけではなく、輸送事業者や倉庫事業者の考え方も重要ではないか。アパレル業者は物流センターを持っていても、運ぶのは輸送事業者。輸送事業者で、まとまって輸配送の効率化を提案していただくことがいいのでは」と強調し、「アパレル業者は、物流については素人なので」と指摘する。現在、段ボールの共同化だけではなく、何度も使える「エコボックス」の普及も進めている。「アパレル業界だけではなく、メディカルにも使われている共同配送の実証実験もスタートさせている。アパレル業界も、ここ数年で変わって来ている」と話す。

     
     
     
     

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