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物流ニュース
許可下りても「軸重違反」 専門家「制度改正が必要」
2018年6月21日
通行許可そのものは取得できたものの、許可証の経路通りに走行して軸重違反を指摘されるケースが続発していることが、特殊車両を運行させる複数の運送会社への取材で明らかになった。それらに共通するのは、高速道路入り口に設置される自動計測装置によって測定された走行中の特殊車両の軸重が、規制値を超過しているという点だ。そうした運送会社では、「通行許可は取れているが、あの経路は走るな」といった現場のドライバーへの指導がなされるなど、通行許可の本来あるべき姿とはかけ離れた行動をとらざるを得ない実態がある。特殊車両通行許可に詳しい専門家からも、制度そのものの改善が必要とする見方が出ている。
今年4月に日貨協連が実施した「第4回車両制限令違反状況調査」。調査に応じた兵庫県内の協同組合の担当者が手にするのは、「指導警告書、措置命令書を出された状況」と書かれた、3枚一組の用紙。用紙には、昨年4月の車限令違反の取り締まり体制強化以降の指導などを受けた16件の「違反」の日付、場所、概要の記載がある。
「平成29年9月29日 阪神高速 湾岸(線)舞洲(IC入り口)の自動計測装置による取り締まりで軸重10トンを超過していたため指導警告が12月7日付で郵送されてきた」「全く同じ貨物を積み3台の車両で運送していたが、当該車両は自動計測装置の手前でブレーキを踏んだ」「他の2台の車両は違反が記録されていないため、弁明に関する資料を出した」そうした記載を手に組合担当者は「弁明は認められず、違反点数3点が付いた」と明かす。自動計測装置が測定した同様の違反は、このほかに3件ある。
この組合とは別に、神戸市内の海上コンテナ輸送会社でも同様事案が続発。同社管理者は「海コンは8割がたの違反が軸重。自動計測装置による軸重摘発は7割程度」と話す。累積の違反点数も、大口多頻度割引に影響が及ぶライン「30点」の手前であることを明かした。先日、NEXCOの担当者からあった電話での指摘に対し、管理者は反論した。「自動計測装置による測定値は確かなものなのかを検証しているのか」
この主張を支える管理者の論理はこうだ。荷送人(荷主)によるコンテナ総重量の測定・証明が義務化された「SOLAS条約」によってコンテナが「フル積載」(30.48トン)以下であることが担保されている。そのもとで、規定通りのトレーラで走行していた「違反」当時、軸重違反があるはずがない——。管理者は、「特殊車両が静止した状態での軸重測定なら反論しない。しかし、高速入り口の減速義務に合わせてブレーキを踏んだことで、前のめりになって走行している特殊車両の軸重を測定しているから反論するんだ」
ブレーキをかけた状態の特殊車両の軸重違反が数多く指摘されるケースについて、特殊車両通行許可に詳しい福島行政書士事務所(神戸市中央区)の福島広三代表は、「フル積載でも、11.5トンまでしか軸重は認められておらず、これ以上の通行許可は今の法律では取れない。(海コンなど)中身の積み替えのできない状況での走行を適法にするには、法改正か自動計測装置の改善を求めるしかない」と話している。
通行許可はあっても軸重違反を指摘される。そんな矛盾に悩む特殊車両輸送の現場の心境を逆なでするかのような制度が5月下旬に国交省で審議された。「重要物流道路」。長さ40フィートの背高(9.6フィート)コンテナによる効率的な物流形態を重要視。車両制限令に定められた「一般的制限値」を、「40フィート背高」が通行許可なく走行できるよう、引き上げるというものだ。具体的には、海上コンテナ輸送であることを証明する書類を40フィート背高車両の乗務員が携行すれば、車両総重量44トン(フル積載30.48トン+トラクタ13.5トン)までは通行許可なく、重要物流道路に指定された区間を走行できる、という制度だ。また、実際に走行した経路を事後に確認できるよう、位置情報を蓄積し双方向通信が可能な「ETC2・0」の装着も、許可なし通行の要件とした。
フル積載状態の海コンを無許可で通行できる︱—。しかし実態は、そう浮かれた話ではない。違反、ことに軸重違反が自動計測装置によって捕捉されてしまうケースには、「取り締まりの対象である(審議会資料)」という。海コン輸送は、中身の確認や積み替えができない特殊輸送で、荷主からのオーダーを信用することで成り立つシステムだ。しかし、走行中の前のめり状態の車両の軸重などという不可抗力までをも違反の対象とされては、その信用も揺らぐ。重要物流道路は、その民間の信用を行政機関としても最大限尊重しようという話かと思いきや、根本は変わらない。
神戸市内の別の海コン輸送業車は、「二度と違反しないよう誓約書を書けとNEXCOから言われたが、こんな環境の中、どのように違反しないようにできるのかと反論した。上司が出てきて『困りましたね』と言っていたが、困っているのはこちらだ」
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