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    災害発生時の物流 国や物流事業者、荷主の協力不可欠

    2019年12月5日

     
     
     

     日本では2010年以降、地震や台風、集中豪雨などの自然災害が増えている。そのため、国交省では災害に強い物流システムを構築するため、国、地方自治体、民間物流事業者の連携方策、民間の物流施設の物資集積拠点としての活用、支援物資物流オペレーションにおける民間ノウハウの活用などについての取り組みを進めてきた。災害発生時における物資の緊急・救援輸送には、多くの物流事業者の協力が不可欠となる。

     千葉県は今年、台風15号と19号、それから集中豪雨と立て続けに自然災害に襲われた。県と千葉ト協(角田正一会長)および県倉庫協会(横田修会長)は、災害発生時等の物資の緊急・救援輸送、保管などに関する協定を締結している。

     千葉ト協は同協定に基づいて、県が災害対策本部を立ち上げたと同時に、協会内に対策本部を設置。県からのオーダーに従って協会の対策本部から各支部に輸送指示を出すことになっている。

     今回の災害では、9月18日に初めて協会に要請が来た。台風15号、19号、集中豪雨と災害が続き、11月13日まで県の対策本部が設置された。その間、協会で対応した緊急・救援輸送は延べ90回にも及んだ。

     輸送は協会でコントロールしているが、基本的には物資を備蓄している県の地区倉庫や、倉庫協会で指定している民間の倉庫に近い運送事業者にオーダーするようにしている。千葉ト協の岩井亮事務局長は「台風15号の災害では、停電で通信機能に支障が生じていたが、災害対応は事前に登録している事業者が行うことになっているため、担当者の携帯番号を抑えており、連絡網が途切れたりすることはなかった」という。

     千葉ト協が今回輸送した物資で一番多かったのはブルーシートで、一部断水があった避難所には水や食料を運んでいる。災害に強い物流システムを構築していくための課題や問題点については、対策本部が解散したばかりなので、これから検証していく。岩井事務局長は「今回の緊急・救援輸送では対応できていたので特に問題はなかったと思う」としながらも、「我々にとっては、ドライバーの生命の安全が第一。その上で今後も、連絡網の確保と連携を強化していく必要がある」と話す。

     また、「これからは、県内だけでなく、広域での物資の緊急・救援輸送についても検証しなければいけない」とし、「広域での連携では、被災地の状況がわからず、時間的にも拘束時間が長くなるので、その部分を検証していかなければならない」としている。

     一方、今回の災害を経験した事業者では、今後訪れる災害に対して、どのような対策が必要と考えているのだろうか。

     成田市を拠点に、工業用精密機械をはじめ住設関連商品やプラスチック製品などの輸送を行っている石橋梱包運輸(佐藤俊幸社長、山武郡)は今回の災害で、駐車場に停めていたトラックが横転したほか、停電による被害で業務に支障をきたした。トラックについては台風への対策をしていたので、全長12メートルの4トン車1台が横転しただけで済んだ。

     停電による被害では、ファクスやインターネット、固定電話の通信が遮断されたため、取引先とのやりとりが大変だったほか、井戸なので水が汲めない、燃料も汲めない状況になった。佐藤社長は「今回の経験で、災害に対する対策はしておかなければならないと改めて実感した」とし、「会社としてはまず、災害時の電気を確保するために発電機の調達から取り掛かる」としている。

     また、「こうした状況で再認識したのは、取引先を中心とした連絡網と連携の強化」とし、「これまで、取引先や協力会社などと、災害時の対策で具体的に話し合うことはなかったが、大丈夫だろうという考えでは対応できなくなる」と危機感を持っている。

     災害時における物流ネットワークの重要性が認識されてきているなかで、流通などの民間企業もネットワークを生かし、災害時の緊急・救援輸送などに取り組むところも増えている。2004年に発生した新潟県三条市の「7・13水害」や「中越大震災」で、多くの店舗が被害に遭ったコメリ(捧雄一郎社長、新潟市)は、早急に災害対策を充実させることの重要性を痛感した。

     そこで、毎年利益の1%相当額を社会に還元する「コメリ緑資金」を元手に、05年にNPO法人コメリ災害対策センター(捧雄一郎理事長、同)を設立。実際の災害対応は事務局が行い、組織内だけでなく、コメリやコメリグループの関係各部署と連携し、地震や風水害、噴火など自然災害を中心に、現在は沖縄県を除く46都道府県で自治体などと締結している各協定に基づいて対応している。

     災害対策について、同センターは「コメリの所有する物流ネットワークや情報を使用し、コメリ及びコメリグループと取引のある運送会社やメーカーに協力をいただいている」とし、「現在は陸路でのみ供給しており、発生した配送費などは、通常の取引の際と同様の対応をしている」という。

     実際の活動について、8月末の九州地方での豪雨では作業用の資機材を、台風15号及び19号では同様に作業用の資機材と、避難所生活に必要な生活用品を供給。また、豚コレラなどの家畜伝染病に対しても、作業用の資機材などを供給している。

     災害対策の活動を行う上で、難しい部分や課題について、同センターでは「実際の緊急時には、多くの人々が業務に携わる。その中で、お互いに正しく情報が共有されていることが重要だが、混乱の中では難しい場合もある」と指摘。「発生した際の対応は平常時から訓練するなど、自治体と関係事業者同士で協議をしておくことが重要」で、「平常時から顔の見える関係づくり、お互いの体制の確認など、いざという時のための連携の強化に努めている」という。

     
     
     
     

    この記事へのコメント

     
    1. やまたけぐん says:

      残念ながら、荷主は運送会社、特にドライバーのことなんか考えてない。この前の大雨のときも、絶対運べというから運んだけど、受け手側はさっさと帰ってて意味なかった。

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