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労務管理
運賃減で配車拒否への対応策
2021年2月5日
「当社は、固定給と配送物や配送量に応じて変動する運行手当で給与を払っているが、あるドライバーが運行手当の減少や運行条件が不満として待遇改善を要求しており、配車拒否も見られる」と話すのは埼玉県の運送企業の社長。
同社はイベント機材や建築資材、現場で発生した廃棄物などを運搬していたが、感染症流行により仕事が激減。新たに仕事を探したものの運賃は低く、従来通りの給与捻出に苦労していた。同社の社長は「現状で精一杯であり、条件は変えられないので、『当社も限界』と伝えると、改善されないのであれば未払い残業代を見つけてあるから払ってもらう、と主張してきた。明確にいつ辞めるとも言ってこないので自主退社は望めず扱いに困っている」と話す。
同社の昨秋時点での平均運賃は手荷役込みの地場大型で2万円台、長距離でも片道6万円を切るという。社長は「深夜に入ったスポットの大型の仕事は埼玉から都内の物流センターまで走っても3万円に届かないことも珍しくない。コンプライアンス対策として、こうしたコースを私が回りながらドライバー達の給料を補填し、なんとかつないでいるのが実情だから、条件が悪い仕事も断れないことが続いた。年末繁忙期に期待していたが、良くて前年の夏から秋頃の運賃までしか戻らなかった」と話す。
杜若経営法律事務所(東京都千代田区)の岸田鑑彦弁護士はこうしたケースでの配車拒否について、「代替の仕事を会社が探し用意した以上、基本的に従業員は応じる義務が生じる。応じない場合は業務命令違反となる可能性もあり、その場合は欠勤扱いとなり従業員への給与が発生しないケースや解雇事由となるケースもある」としている。
冒頭の事例の解決策については、「辞めてほしくないなら、無理に命令するのではなく、休業を勧め、期間を置くのも手。離職しても問題なく、会社からの解雇としたくないのであれば、来月残られていた場合に支払う給与額分程度の手切れ金を用意して念書を書かせ、退職推奨からの合意退職へと持っていく形の早期解決が望ましい」とした。
その上で「明確に欠勤としていくため、当人の配車拒否が予想された上でもしっかりとシフトを組み、業務連絡を行い、そして当人の身勝手な欠勤によってお客様にも不利益が生じ、会社がカバーしたなどの記録を積み重ねるのも手」としている。
なお、同氏は給与の減額について「あくまでも基本給が最低賃金以上であったり、完全歩合ならその中でも最低保証額以上であることが妥当と認められる前提になってくる」とし、「あくまで歩合の中で適切な範囲での変動であれば認められる。コロナ渦でも就業規則・賃金規定などに関する基本的な部分は変わらない。雇用時の契約はしっかりと確認した上で対応を」としている。
山下江法律相談事務所東京虎ノ門オフィス(東京都港区)の岡篤志弁護士にも確認すると、給与増減に関する主張については「事前に配送物や配送量で運行手当が支給されると伝えており、たまたま低単価の配送が続いただけであれば、給料の減額ではない。前提として該当ドライバーのみ不当に手当が低くなる配車をされていないものとするが、仮に基本給をそのままとし、賃金規定通りに計算された運行手当が支払われ、更に雇用にあたって該当従業員の業務内容ならびに乗車トラックなどを限定・約束していないのであれば給料の減額に問題はない」とし、「該当ドライバーが配車拒否を続けた場合、解雇事由にあたる可能性もある。当該ドライバーに給与体系を説明し、配車拒否をやめるよう説得する必要があるのでは」と話す。
同氏はこうした事例に対し、就業規則、給与規定及び労働契約書の記載内容によって会社の有利不利が変わると話し、事前に就業規則や賃金規定および給与の計算方法等を整備し、従業員を雇う際には説明するよう勧めている。
将来を見据えて就業規則などの変更を検討する際にも注意が必要で、「就業規則の変更には従業員側の合意が原則として必要となる。合意を得ることができればいいが、万一、合意無しで変更を加えるのであれば就業規則の変更に合理性があること、労働者に就業規則の変更を周知させることが必要になる」としている。
なお、前述の事例について「給与増減に関する主張の問題、残業代未払いは別々の問題であり、会社側は両方の問題に対応する必要がある。仮に配車拒否が解決しても、原則、残業代は1日8時間・週40時間以上の労働があれば発生するもので、毎月の支給額の明細に残業代が含まれている形で記されていなければ会社側に支払いを命じられる可能性がある」と指摘している。
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単純に営業能力や交渉力もない人が社長を勤める会社はこうなる。こういう会社はだいたい無駄に事務方が多く、ドライバーにはボーナスは無いのに事務方だけボーナスを普通に貰っている様な会社。力がない会社は倒産すれば良い。その方が他の運送会社の為になる。
必死で仕事を探して見つけた仕事を営業力や交渉力がないとこき下ろしあまつさえ倒産すればいいとまでのたまうあんたは悪魔だよ。
その必死で見つけた仕事が人件費どころか燃料費もペイできないレベルだったら取ってきた営業は無能と言われても仕方ないよね
倒産した方がドライバーのため、世のためなのでは?
大手チェーン店と同じレベルの唐揚げ弁当を100円で売るのは経営者の勝手だが、店員の仕事は大手チェーン店とほぼ同じなんだから、それと同じレベルの給料を求められても当たり前なのは子供に3秒だけ考えさせても解るレベルの事でしょ?
ドライバーの仕事は、元請たろうが10次請けだろが、全く同じ。
真っ当な給料を払えないんだったら経営能力がないと言えるから倒産したほうがいいと思う。
そんな運送会社、別に社会は求めてないのでは?
法的に給料を減額したりするのはやりたきゃやればいいと思うけど、単純に辞めていく上に反感買って未払い残業請求されるだけだし、ドライバーは昭和の時代から転職毎に横のつながりは残して情報共有するのが当たり前で、いわばアナログのSNSネットワークを持ってる唯一の職業でもあるんだよ?
求人かけても誰も来なくなるよ。