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射界
2016年3月7日号 射界
2016年3月10日
自分の気に入った相手を好ましく思い、何かと面倒を見る。逆に気に食わない相手を嫌うのも、言ってみれば人情として自然の流れかも知れない。問題は、ややもするとバランスを失って公平な判断を下せなくなることだ。その結果、自分の評価を落とすばかりでなく、相手までもダメにし周囲に迷惑を掛けることになる。
▲中国の古書『大学』に「人はその親愛する所において辟(へき)す。その賎悪(せんお)する所において辟す」とある。『大学』は親子の愛情について戒めている言葉だが、一般的に、組織のリーダーとしての心得を諭しているとも言える。リーダーたる者、組織をまとめていくうえで心しなければならないのは「公平に」ということで、その原則を守るのが重要と厳しく諭している。▲リーダーとて人間。ともすれば好き嫌いの感情が出やすい。それが高じて「えこひいき」になる。その結果、まともな部下はやる気を失い、組織の中に隙間を生むことになり、リーダーとしての品格を失う。ある経営者が酒席の雑談とは言え、「おべんちゃらを言って擦り寄ってくる者は可愛いよ」とポロリ。本音を語ったと言えばご愛嬌だが、心奥を垣間見た寂しさから苦笑するしかなかった。
▲酒席での戯言(ざれごと)として聞き流せばそれまで。この経営者の深層に多少とも「えこひいき」感情があるとすれば、公平に見る物差しはなくなり、部下たちは気の毒な立場にある。経営者に限らず、組織のリーダーに公平を欠くような兆候が見られれば、その組織は確実に生色を失っていく。経営者やリーダーが部下たちのやる気を引き出すには、まず公平原則を貫くことであろう。
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