-
射界
2016年4月11日号 射界
2016年4月15日
「心頭滅却すれば火も自ずから涼し」とは、織田信長に攻められ武田家の菩提寺である恵林寺に火が放たれてとき、その火中に端座合掌して泰然自若と大往生を遂げた国師快川和尚の言葉だ。修行で安心立命の境地に至れば火もまた涼しく感じる。熱いとか言うのは精神的な感覚で、苦痛も苦痛でなくなるとの心境を語る。
▲日頃、周囲から「さえない」と蔑称されている人でも、どんな難関に遭遇しようとも諦めず、一心不乱に目指す目標に向かって励めば、必ず立派な成果が得られる。周囲の中傷や悪評にもめげず、これぞと確信した気持ちで懸命に取り組む。「こけの一念」といわれようが、そこには堅い信念が気概となって力強く息づく。「やればできる」の気持ちを大事に精励する健気さすらある。▲人は往々にして、仕事に取り組む前に、その難易を考えてしまう。そして「難しいのでは」とか「失敗したら…」と理由なく先読みして手を着けるのに躊躇する。自己防衛の気持ちが働いてマイナス思考に陥ってしまう。本来考えなければならない目的達成への手順や工夫より、我が身の安全を優先してしまう。不安は次の不安をあおり、目的達成への道は遠のくばかりである。
▲どんな仕事も、ある程度の失敗は付きものだ。最初から終わりまで何の支障もなく進むことは少なく、予期しない障害が立ちふさがり、それを乗り越えれば次の課題が待っている。それらを解決しながら前進して目標達成のゴールを決める。それが仕事だ。八方ふさがりの境地に立たされながら「火もまた涼し」の気持ちで取り組む。危機の火中にあって快川和尚の心境を反芻したい。
-
-
-
-
「射界」の 月別記事一覧
-
「射界」の新着記事
-
物流メルマガ