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射界
2016年8月1日号 射界
2016年8月4日
新人が会社に入る。経営者は「キミの頑張りに期待している」と言い、新人も「頑張ります」と意気込む。初めから「怠けてやろう」と考える者はいないからだ。しかし、時間とともに初めの意気込みが薄れてくる。なかには会社を辞める者も出てくる。こんな事態で経営者として何を思い浮べるか。それは「泆道」の教えだ。
▲「泆道」は「いつどう」と読むが、国語辞典によれば「人々の生活を安楽にする道」とある。つまり、上に立つ者は働く人々の生活を、もっと豊かなものにしてやりたいと言う気持ちをもって働く者を使えば、使われる者も少々の苦労など厭うことなく仕事に励み、経営者を恨んだりしないものだ。今の苦労がいずれは自分たちの生活向上に繋がってくると期待し、信じるからである。▲この教えは四書五経の一つ『孟子』にある「泆道を以って民を使えば、労すといえども怨まず」と教えている。元々は政治について語られた教訓だが、現代では、そのまま経営者の守るべき基本としても通用する教えだ。この言葉の真意は、従業員に「一生懸命働くことは会社のためであると同時に、それ以上に自分のためにもなる」と教えている。この点を十分理解しなければならない。
▲そうは言うものの、実行には経営者の意識改革が必須である。経営者の中には「会社は自分のもの」と考える人がいて、その錯覚が大きな過ちを誘発している。製紙大手の御曹司がギャンブルに狂い、電機メーカー経営者が外資に明け渡した事例がある。巨大自治体トップの公私混同ぶりは耳新しい。小なりといえども一国一城の主、経営者の端くれにあれば「泆道」の教えを心に銘記したい。
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