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射界
2016年8月8日号 射界
2016年8月12日
「起承転結」という言葉がある。物事の展開や物語を組み立てる際、あるいは文章を綴るときなどに、メリハリを利かして構成したいと思い、その順序を考える。そこに求められるのが起承転結だ。短い文章でも書き出しに悩んだ経験は誰にでもあろう。書き出しの良し悪しで読む人の印象が変わってしまうからである。
▲江戸後期に活躍した儒学者の頼山陽。彼の残した戯れ歌に「おおさか本町糸屋の娘 姉が二十歳(はたち)で妹は十九 諸国諸大名弓矢で殺す 糸屋の娘は目で殺す」があり、みごとに起承転結の極意を伝えている。「転」に相当する部分で諸大名が登場してびっくり。大丈夫かなと思っていると、「結」で娘と大名をつなげている。昔から起承転結を教える格好の例に取り上げられている。▲さり気なく短い戯れ歌の中で全てを語り尽くす瀬山陽の力量はともかく、文章の流れに「粋」を感じさせるのは、さすがだ。スマートささえ漂う。どんなものにも起承転結の構成があれば安定感が漂い、素直に読み進められるからいい。しかもこの概念、万国共通のようで、アメリカの経済学者ダニエル・カーネマン氏(2002年にノーベル賞受賞)が同様趣旨の言葉を残している。
▲彼の主張によれば、人は経験知を蓄えながら成長するが、経験は、総じて「物事のピーク時とエンド時の出来事や印象で決まる」と言い、そこから「ピーク・エンドの法則」を編み出している。転じて考えれば、初対面の人と接するとき、人は第一印象の良さを心掛け、そして帰り際の行動で好印象を上積みしたいと考える。文章に限らず、人との接遇でも起承転結は息づいている。
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