-
射界
2016年11月21日号 射界
2016年11月25日
年齢を重ねる。この世に生を享けて以来、これは誰しも逃れられない運命(さだめ)である。20代の若者は40代の人を見て、それまでになるのは遥か先と思うが、いつの間にか、その年齢に達している。そして60代の人を見る。自分にはまだ、かなりの時間(とき)があると考えるが、その年齢になって愕然とする。
▲人は皆、年齢を重ねることで身体の衰えを覚えるだろう。仕事が忙しくなり、不規則な日々を余儀なくされる。高血圧や生活習慣病の心配も出てくる。体力の衰えとともに、気力も以前通りとは限らない。視力も衰えるが「老眼鏡」を整えるには抵抗があって、一日延ばしに先送りする。日常の不自由さは何とかごまかしながら、迫りくる「老い」の恐怖と闘いながら「若さ」を誇張したがる。▲少子高齢化が問題になっている。特に高度な練度を求められる業界では、熟練の高齢者が少なくなり、それを継ぐ若年者が数少なくなって危惧の念は拡大するばかり。あの手この手で後継者探しに苦心しているが決定的な手がないのが実情だ。西欧の古賢は「青春が幸福に値するのは、美しいものを見る能力を備えているからだ」というが、ものを見る練度については言及していない。
▲確かに人は、年齢を重ねることで心身ともに衰えを覚える。いかんともし難いことだが、精神まで劣化させることはない。若者が森羅万象に「美」を見つける能力があるとすれば、年齢を重ねた者は、経験と知恵を加味して「味わいのある深い美」を見つける能力を養えばよい。「もう年だから…」と、気持ちまで老化させる必要はない。「老いのまさに至らんとするを知らず」の思いである。
-
-
-
-
「射界」の 月別記事一覧
-
「射界」の新着記事
-
物流メルマガ