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射界
2017年2月6日号 射界
2017年2月10日
「人に頭を下げられないうちは半人前」と経営の神様・松下幸之助(松下電器=現パナソニックの創業者)は説く。目上の人にも平然とタメ口をきき、挨拶もろくにできない人が増えているのを憂いての発言。「あなたに教わらなくても、ネットで探します」と言い放ち、頭を下げて教えを乞う謙虚さを失った人への警句だ。
▲ここから浮かび上がるのは、手掛けた仕事に対する「必死さ」の無さである。仕事の中身を自らが差別することなく、どんな小さな仕事でも必死の思いで仕上げた成果には、言うに言われぬ輝きが見られる。頭を下げて先輩や上司の指導を受け、なんとしても仕上げようと努力した足取りは、体裁だけにこだわって形を整えた、見せかけの仕事と比べて雲泥の差があり、微妙なプライドがある。▲経験を積んで「これでよし」とする仕事はない。仕事の出来具合は自分が判断するものでなく、他人の厳しい評価を経て定まる。自己満足は成長を阻害するだけで、仕事の中身を練磨する働きはない。常に謙虚な姿勢で「頭を下げて」教えを乞い、「半人前」との自覚をもって仕事の質を高めるよう努力しなければならない。それが人間力向上にも役立つのだ。
▲人の成長を妨げる一番の障害は、「人に教わらなくても知っている」という自惚れだ。確かに、誰に教わることなく完璧に仕上げる人はいるが、ほんの一握りの人だ。凡人の我が身は一握りの人とは違い、謙虚でありたいと思いながら、なめられたくないという虚栄のあまり、つい背伸びしてしまう愚かさが先行する。人は自分の能力を誇示したくて必死だが、そこに「頭を下げる」謙虚さが加われば未来は明るくなる。
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