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射界
2017年3月27日号 射界
2017年3月31日
年を重ねるに従って魅力が増していった俳優の一人にショーン・コネリーがいる。映画「007」シリーズで初代のジェームス・ボンドを演じた俳優だ。その頃の彼は、やや濃い過ぎる二枚目だったが、年齢を重ねるに伴い渋みが出て風格のある「いい顔」になった。年相応の顔になれば、それはそれで魅力的である。
▲人は誰でも年とともに肉体の老化が始まる。自然の摂理として避けがたい現象だが、それとは別に年相応に心(気持ち)を整える可能性を誰もが持つ。50歳なら50歳の、還暦を迎えればそれらしい心を持てばよい。年輪を重ねた分の味わいを持つことに心掛ければよいのだ。あれこれと手を尽くして外見を整えたとしても、精神年齢の繕いにはならない。私称年齢との乖離が目立つだけ。▲家庭を持って責任を果たし、社会の一員として生きる立場を自覚し、確たる自信を持って年を重ねることで、誰もが納得する「いい顔」になっていく。ショーン・コネリーがボンド役を終わった後、どんな生き方をしたかは知らないが、仄聞するところによれば、地味で堅実、かつ誠実な生き方を貫いたという。それが彼をして、渋くて風格のある実像をつくり出したのだろう。
▲理由なく人は、青春時代を懐かしむ。若さを憧憬する余りの切ない願望だ。ある作家が「青春とは、人生のある期間を言うのでなく、心の様相を言うのだ。年を重ねただけで人は老いない。理想を失ったときに初めて老いが来る」と書いている。どんな人生でもよい。「自分はこう考え、こう生きてきた」と、胸を張って言えるようであれば魅力的な人間になれる。おのずと「いい顔」にもなる。
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