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射界
2017年11月6日号 射界
2017年11月3日
世間で広く使われている言葉に「三十六計、逃げるにしかず」とか「君子、危うきに近寄らず」がある。いずれも思慮深い人は「危険がある」と分かれば、用心して危険に遭わないような対策をする…などの意味で使われている。中国・南北朝時代に活躍した武将・檀道済の戦いぶりを評して生まれた格言として伝えられる。
▲「三十六計」とは、数ある戦術を比喩する表現だが、戦術は三十六しかないとの意味ではない。数多い戦術の中で「逃げる」という策は上計(上級の計略)とされ、中国の古書『南済書』に「三十六策、走るをこれ上計とす」と明確に記している。封建社会のお国柄では到底受け入れがたい思想だが、大陸思想はそれを許している。戦況不利となれば撤退……それが上計であり良策とされる。▲翻ってビジネス社会ではどうか。日々厳しい戦いが繰り広げられる渦中で、この思想は極めて重要だ。かつて勝てる見込みがない戦いにも関わらず、「当たって砕けろ」と猪突猛進して大失敗した苦い経験がある。それを忘れてはならない。勝てないと判断した段階で潔く撤退して戦力を温存する。そうすれば勝てるチャンスは必ず訪れる…という発想で、生き残るための有効な上策と説く。
▲無謀な猪突猛進を「玉砕」と美化し、戦況不利と判断して撤退するのを「転進」と称した経験は夢想でしかなかった。ビジネスの戦いでも、戦いが有利に展開するためには、天・地に加えて人の利が有効に働いてこそ得られる。その中の一つが欠ければ機能不全に陥り、危機管理が適切に働かないと、厳しい商戦に飲み込まれて沈む。人生も経営戦略もまた、時に「逃げる」ことも大事だ。
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