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    3割安の見積もりに驚愕するも大手参入をブロック

    2010年7月16日

     
     
     

     消費が冷え込む中、荷主の物流コスト削減ニーズは依然高く、一方的な運賃値下げを強いられるケースが頻発しているのが実情だ。こうした中、これまで領域を侵してこなかった大手資本が中小・零細のエリアに参入し、仕事を奪うケースも発生してきている。今年に入って埼玉県の事業者は、荷主に現状よりも3割減の見積もりを出した大手物流業者に、仕事を奪われそうになったという。「資本力では太刀打ちできない」と腹をくくった同社社長は、荷主にある提案を持ちかける賭けに出た。


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     「荷主から言われたときは、正直びっくりした」と振り返る同社長。アパレル関係の輸送を手掛ける同社の荷主に突然、大手物流会社の営業マンがやってきて見積もりを出したのだという。

     もともと、その荷主と大手物流会社は違う部門で取引があったが、それまでは暗黙の了解で、それぞれの領域を侵すこともなく、過ごしてきた。

     しかし、その領域を侵して見積もりを出してきたのだ。「荷量が減っていることから、なりふり構わない営業攻勢を行ってきたのだろうが、大手資本と勝負できるだけの余力がないうちにとっては、大きな危機だった」と同社長。その見積もりの詳細を知って、同社長はさらに驚愕したという。

     「うちの今の運賃よりも3割も安い見積もりだった」という。真っ向から勝負すれば、同社に勝ち目はなかった。月間600万円の仕事だが、零細企業である同社にとっては大きな荷主で、失えば同社の痛手は計り知れなかった。

     荷主の担当者から、大手が出した見積もりでできるか・できないか、を問われた同社長は決断を迫られた。「その価格で請け負えば、間違いなく赤字になった」という。しかし、それで請け負わなければ、仕事を失うことになる。

     悩んだ末、同社長はある決断をする。「どうせ、何もしなければ失うだけ」と考え、大手の出した見積もりでやると答えたのだ。

     しかし、ここからが同社長の本当の勝負だった。安い見積もりで受ける代わりに、見積もりを出してきた大手物流会社に、同社の下請けでやってもらうことを荷主に提案したのだ。もし大手が請け負えないようであれば、これまで通りの料金で同社が請け負うことを約束させた。

     「荷主に約束させることができたときに、勝てると思った」という同社長は、その大手物流会社が同社の下請けで仕事を請けるという可能性がないことを、すでに調べていたという。

     「そもそも、大手は安く入って他ができないようにしてから、運賃単価を引き上げる」とし、「それは、元請けとなってはじめてできることで、下請けではメリットがまったくなくなるので、まずやらない」という。

     とはいえ、大手が受けないという確実な保証があったわけではなかった。「うちにとっての賭けだった」と振り返る同社長は、荷主、そして大手物流会社の動向を読みながら、駆け引きを行い、見事、資本力のある大手の参入を拒んだのだ。

     「ひとつの山を乗り越えた」という同社長は、今回の一件で荷主とさらなる信頼関係の構築に成功したとしており、「ピンチはチャンス」という言葉を、しっかりとかみしめている。(高田直樹)

     
     
     
     
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