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「直荷主と取引」の喜びも束の間 1年弱で契約解除に
2010年9月9日
ある事業者は同業他社数社と物流コンペに参加、食品メーカーである直荷主との契約にこぎつけた。物流を一手に引き受けることで、売り上げ拡大、会社の体質強化も図れると喜んでいた。しかし、いざフタを開けてみると、取引開始早々にトラブルが発生。荷主が事前に伝えていた内容とまったく違い、現場が混乱してしまったのだ。コンペで出した提案はことごとく変えられ、粘り強い交渉もむなしく、わずか1年弱で契約解除となった。
多大な損害を被った事業者は、「直荷主がいいと考えていたが、あまりにもリスクが大きい」とし、「リスクの少ない下請けの仕事のほうが楽だといえ、今回は直荷主の怖さを思い知った」と話している。取引の開始早々、同社ドライバーに対し配送先のクレームが相次いだ。荷主に提案した通りに業務をこなしていた同社にとって、理解ができないものだった。同社は荷主から教えてもらった配送先の時間帯をもとに独自のルートを作成。それまで1日35台使用していた車両を20台まで減らし、大幅なコスト削減を可能にした。
クレームは、荷主が同社に伝えていた配送先への納品時間が違っていたことが原因で、「時間はまったくでたらめだった」と同社長はいう。そのため、提案した内容では無理で、急いで車を増やすことになった。さらに、仕分け作業も任される予定だったが、伝えられた内容が違ったことから人手が足りず、人材派遣を頼んで対応した。
同社が提案した予算は、提案通りにいって利益が出る仕組みであり、提案が遂行されなければコストは当然かさむ。その提案外の業務による費用の請求を嫌がった荷主が「配送でトラブルを起こしたことで顧客を失った」と、同社に損害賠償を求めてきたのだ。同社社長は粘り強く荷主と交渉したが、荷主の連絡ミスで生じたコストの一部の支払いには応じたものの、同社への損害賠償の請求はやめなかった。
荷主は老舗食品メーカーとして、地元では名前が売れていた。契約を勝ち取ったことに期待を寄せていたが、ミスを認めず、損害賠償を求めてくる姿勢に、「完全に運送会社を下に見て馬鹿にしている」と憤る。
同社はそれでも契約した以上、いい加減な仕事はできないと、赤字を重ねながらも業務をこなしていた。ところが、開始から1年も経たないうちに、契約解除を知らせるファクスが同社に届いた。「交渉で引き下がらないウチの姿勢が嫌だったのだろう」と振り返る同社長は、「運送会社は何でも言うことを聞く相手だと考えていたようだ」と指摘する。
同社は仕事を始める際、荷主所有の20台の自家用トラックをドライバーを含めて吸収していた。契約解除となると必要なくなり、荷主へトラックの引き取りを打診するが、「そちらで他に仕事を探してくれ」と、応じるそぶりを見せない。
このままでは、20台以上のトラックが遊んでしまう。「資本力のある会社なら何とかなるかもしれないが、中小・零細では難しく、リストラを行うしかない」とこぼす。
同社長は「運送会社にとって直荷主は魅力だが、大きなリスクがあることも理解した。すぐに手を引ける下請けの方が、リスクが少なく、いい面もある」と話し、今後の営業戦略を見直している。
契約を結び、実際に取引をスタートしたのが昨年11月で、今年8月に契約解除。取引は10か月という短い期間で終了した。その間に、同社が費やしたコストは1億円を超える。「直荷主ということでがんばったが、毎月赤字でどうしようもなかった」と振り返る同社長は現在、契約が切れるのを待って損失分を請求する訴訟を起こす準備を進めている。(高田直樹)
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