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    路面凍結スリップ事故 道路管理の瑕疵認定 鳥取県

    2010年11月1日

     
     
     

     「道路管理者に求められている職務遂行に怠慢があったのは明らかだ」として平成20年3月、路面凍結によるスリップ事故を起こした東和運輸(梶川三郎社長、岡山市南区)と岡ト共済(竹本秀忠理事長)が、鳥取県を相手取って提訴していた「損害賠償請求事件」(本紙既報)の判決が10月19日に岡山地裁であり、次田和明裁判官は県の「道路の管理に瑕疵があった」ことを認定したうえで、原告らに対して計281万円を支払うよう命じた。事故原因として道路管理の落ち度に言及する判決は、ある意味で画期的。それだけに今後の県の対応が注目されるが、民間企業が経営・管理責任を厳しく追及される時代にあって、行政サイドの意識改革はどうなのか。そうした部分にも一石を投じている。



     事故は同19年1月30日の午前8時10分ごろ、岡山・鳥取の県境にある国道179号・人形峠トンネルを鳥取方面に抜けた地点(同県三朝町)で発生。路面凍結によってスリップした東和運輸の大型トラックが、すでに自損事故のために路肩で停車していた2?トラックをかわそうとしたものの接触。さらに、対向車線を走ってきた大型バスを避けようと法面に乗り上げたことで傾いたウイング荷台から飛び出た積み荷がバスを直撃し、その後も散乱した積み荷に後続車が衝突するなど、車両数台が絡む大きな事故となったもの。

     原告側は「事故現場は山間部で、北側に向いた路面は寒冷風雪を受けやすいうえ、残雪の水分が路面に浸透するなど凍結しやすい状況だった」とし、東和運輸以外の車両も次々とスリップ事故を起こした事実を指摘。また、「トンネル入り口の岡山側では、前日の午前11時および事故当日の午前6時20分ごろに撒かれた凍結防止剤によって路面凍結はなかったが、鳥取側が凍結防止剤を散布したのは事故前日の午後5時半から同6時の間だった」として、道路管理に瑕疵があったことを追及していた。

     一方、県側は「国内での凍結防止剤の散布要領の基準を満たしており、その後の降雨などで効果がなくなることは予測できなかった」と主張。また、制限速度違反やブレーキングなどでドライバーの運転操作にも不適切な部分があったと指摘していた。

     判決では、まず東和運輸のトラック以外にもスリップ事故を起こしている事実を踏まえて「(国道179号の構造面から)凍結した場合にはスリップ事故が生じやすい状況にあった」と認定したうえで、「安全かつ円滑な交通を確保する義務があった」と言及。また、凍結防止剤についても「(前日に散布してから)道路状況の確認も行わずに放置していた」と断じるとともに、2回にわたって凍結防止剤を撒くなど道路状況の実地確認を怠らなかった岡山県の管理状況と照らしながら、「路面凍結を事前に予測することが不可能だったとはいえない」と指摘した。

     また、「ドライバーの不適切な運転操作」については「異常で無謀、また自殺行為であるとまではいえない」として「過失相殺を行うことにより考慮すべき」とし、過失相殺の割合は50%が相当と判断。原告らに対し、請求額の半分となる計281万円余りの支払いを命じる判決を言い渡した。

     鳥取県側は路面凍結の状況を「正確に予測することは不可能だった」と主張する一方、「現場に付きっきりで観察することも現実的ではない」と財政事情も一因であることを匂わせている。安全管理の徹底を厳しく求められ、そのための多大な投資にも「待った」のないトラック運送業界の立場からすれば、「なんとも身勝手な言い分」という感もある。

     道路管理者を相手取った裁判で勝利を手にすることの難しさは予想された。東和運輸の梶川社長は提訴した当時、「道路管理者としての職務怠慢に原因があるのは明らかだが、当初から県側の応対が担当課長だったことにも危機意識の欠如を感じる」と話しており、そうした部分で官民双方に大きな温度差が存在することが同裁判を通じてあらためて明白となった格好だ。

     まもなく今年も路面凍結のシーズンを迎えるが、この事故を機に現場の道路状況はすでに改善されている。「それだけでも(訴訟を起こした)意義はあるが、事故が発生する可能性のある道路状況を放置してきた責任を真摯に受け止めてもらいたい」(同社長)と重ねて強調している。

     岡ト共済では「明らかに路面状況は悪く、こちら(東和運輸)の車両以外にもスリップ事故が起きており、安全管理の義務を怠っていたというしかない」と説明。道路状況の不具合などを理由として「管理者である県などを相手に提訴するのは一般的にも珍しく、共済としても初めてのこと」と話しているが、それだけに今回の地裁の判断は画期的ともいえる。

     一方、本格的な冬シーズンを控えた時期とあって今後、寒冷地を抱える道路管理者には大きな意味を持つ判決になったことは間違いない。それだけに同県の今後の対応が注目されるところ。

     県側は提訴された20年当時、「管理業務は内部規定に基づいた適切なものだった」(道路企画課)などと話していたが、判決を踏まえて「主張が認められず残念。控訴期限は11月4日で、現在、その方向(控訴)で手続きを進めているところ」(10月27現在)としている。(長尾和仁)

     
     
     
     
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