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    新規運送会社からの改善提案、採用できない理由とは

    2010年11月10日

     
     
     

     「ライバル会社が入れた見積もりのせいで、それまでの運賃が大幅に引き下げられた」という類の話は珍しくない。「安ければ(品質は後回しでも)いいという考えが根強い荷主もいて、『値段を下げるという運送会社が営業に来ている』とカマをかけるケースまである」と暴露するトラック関係者もいる。ただ、荷主ばかりを責められない現実があるのも確かで、ある大手メーカーの物流担当者は「新しい運送会社が持ち込んでくる改善提案に耳を傾けたい思いはあっても、もし失敗すればこっちのクビも危ない」。結果として、思い切った提案や見積もりを差し入れたところで新規の仕事が獲得できないばかりか、そうした同業者による営業行為が既存事業者の立場を一段と不利にするだけに終わる光景も垣間見られる。



     大手家電メーカーの物流を手掛けるトラック50台超の運送事業者に今夏、運賃の20%カットを伝える文書が届いた。ここ数年間、何度か数パーセントの値引きを繰り返されてきた同社とすれば事態は深刻で、「すぐさま物流部門の責任者に連絡を入れた」(担当の取締役)という。

     「海外メーカーにシェア争いで差をつけられたのが理由と説明され、当面の間の協力要請だった」と取締役。その後、安い運賃で割り込もうとしている同業者の存在も耳に入ってきたが、「外部に転嫁できないコスト増を必死の思いで吸収し続けてきたトラック事業者の立場からすれば、よそへのシワ寄せを簡単に発想する思考回路が理解できない」とぶちまける。

     一方、大手運送事業者の下請けとして運行便を担ってきたトラック100台ほどの運送事業者も8月から、信じられない運賃カットに見舞われている。社長によれば「届いた文書に記された運賃基準に従って計算すると、従来比で45%ダウンという下落幅になってしまう」とのこと。

     しかも、協力要請というレベルではなく、「やりますか? やるなら締切日までに連絡するように…そんな内容だった」。荷物を獲得するために大手同士が壮絶な争いを演じ、「特に、ネット販売を手掛ける人気メーカーや小売業者などに向けて超破格の物流コストを提案しているようで、こうした大手事業者による体力消耗戦の影響が我々のような下請け、孫請けにモロに出ている」と社長。

     ただ、荷主サイドにも言い分がないわけではない様子。ある大手食品メーカーの物流担当者は「運送会社から年中、現状改善のための提案が持ち込まれるが、輸送品質を向上させるといわれてもスタート時点で目に見えるわけではなく、結局は運賃を下げる提案が多くなる。ただ、物流コストが圧縮できるという理由だけで運送会社を切り替えた場合、いざ仕事を始めてからチョンボでもやられると大変。場合によっては社内的に、こっちのクビまで危なくなる」。結果的に、新規事業者から提案があった「値引き」の部分は見過ごすわけにはいかない立場から、その部分だけを既存事業者に押し付ける格好になってしまうという。(長尾和仁)

     
     
     
     
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