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運送会社に就職できない 乗れるトラックがない高卒者
2011年3月17日
新卒者の就職率が過去最低を更新する中、就職口を運送業界に求める新卒者も少なくない。奈良県の運送会社にも昨年から、複数の高校の生徒が進路指導の先生に付き添われて会社説明に訪れた。同社は従業員の高齢化が進む中、絶好の人材確保の機会ととらえ、仕事内容や就業体系などを熱心に説明し、採用に向けて前向きに調整を進めていた。しかし結局、一人の新卒者も採用するには至らなかった。理由は、新卒者が乗れるトラックが1台もなかったためだ。4年前に改正された免許制度が若年層の就職にも大きく影響を及ぼし、運送業界の人材不足に拍車をかけようとしている。
同社は近距離の仕事が多く、30台のトラックのうち2トン車を20台保有。しかし、20台すべてが車両総重量5トン以上で、新しい免許制度の普通免許では運転できない。新免許制度では4トントラック(最大積載量3トン以上6.5トン未満、車両総重量5トン以上11トン未満)は普通免許では運転できず、中型免許が必要。しかし、冷凍車やクレーン付き車、パワーゲート車など架装した2?車が総重量5?未満に納まることは難しい。同社のアルミ素材を使った箱車でも総重量が5.1トンで、平ボディー車も荷台に鉄板を敷いているため5?を超えており、中型免許が必要だ。
中型免許は20歳以上(運転経験2年以上)でないと取得できないため、2トン車以上の車種で事業展開している事業者では、高校新卒者が運転業務に従事することは難しい。
運送会社社長は「普通免許で乗れる車がなかった。先生には熱心に就職先を斡旋していただき、生徒さんも物流業界に前向きな姿勢を見せておられたのに期待を裏切ってしまった」と話す。
新免許制度で運転できる2トン車について、メーカー各社は「新普通免許対応車」を販売しているが、現場で使用される機会は少ない。あるディーラーは、「一部の完成車は確かに新普通免許で運転できるが、メーカーが出荷するときとユーザーに納めるときの車両総重量は異なる。さらに排ガス対策、安全対策で車両が重量化しており、ますます困難になってきている」と説明する。
また、新普通免許を取得した20歳の若者の採用を今年に入ってから断ったという大阪府の運送会社は「免許制度がおかしい。もともと最大積載量に応じて車の大きさを判断し、免許の区分を決めていたのに、実情と合わないケースが見られる。今の若い人が2年待って中型免許を取得して業界に来てくれるか疑問だ。近い将来、運転者不足で業界が混乱するのでは」と、現在の免許制度を批判している。(大塚 仁)
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