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下請けを使って従業員リストラ モラル欠く荷主
2011年4月6日
企業はコンプライアンスの徹底を図るため、あらゆる手立てを講じているが、中には、荷主という立場を利用した体のいいリストラを断行するケースもあるという。そこには自分勝手で、企業モラルの問われる現実が垣間見られる。メール便の輸送を請け負ったという千葉県の運送事業者は、荷主の理不尽な対応に憤慨、「企業モラルも何もない」と怒りをあらわにする一方、「許せないがどうすることもできず、泣き寝入りするしかない」とこぼしている。
同社がメール便の輸送を請けたのは半年前のこと。荷主は一部上場会社の物流子会社だった。同社が請け負う際、条件が加えられたという。梱包作業や伝票発行など、倉庫で作業するスタッフも引き受けて欲しいとの条件だ。同社は、荷主が雇用していたスタッフを転籍させ、同社の社員として新たに採用し、これまでと同じ仕事に従事させたという。同社にとって、配送だけでなく倉庫内作業も請け負えるということは、荷主とより深い関係を構築でき、いわば渡りに船の話だった。
しかし、半年経って状況が変わってきた。荷主は同社に対し、配送を専門にやるよう命じるとともに、倉庫内作業は手を引くよう求めてきたのだ。
荷主の話では、景気が悪化して倉庫作業員を使う予算がないということだったが、それは建前で本音はまったく違っていた。同社社長は、「荷主が計画的に初めから絵を描いていた」と指摘する。
倉庫スタッフは荷主にとって余剰人員であり、整理をしたい部署でもあったという。ただ、労働組合も強く、簡単に解雇できなかったため、下請け業者に転籍させることで、実質、自社からの排除に成功したのだ。
しかし、すぐに不必要だといえば目的がばれてしまうからと、半年間猶予したのだという。「最初から自社のスタッフのクビを切るために転籍させたのだ」と憤慨する同社社長は、「うちを利用してリストラを図るというモラルも何もない企業だが、訴えることもできず、泣き寝入りするしかない」とこぼす。
「他に振りかえる仕事があればいいが、現状ではそれもない」とする社長は、「解雇をいつ伝えるか迷っている」と話している。(高田直樹)
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