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札幌の事業者、改善案を提示し運賃アップ 燃料高騰怖くない
2011年5月31日
燃料費の高止まりが続く中、燃料サーチャージ制の導入や運賃の値上げを荷主や元請けに気持ちよく呑んでもらったという話は、道内の中小運送事業者からはほとんど聞かない。しかし、札幌市の若手事業者は、前回の燃料暴騰時を契機に荷主と運賃交渉を行い、約半数の荷主からサーチャージの導入、もしくは運賃単価の上昇を勝ち得た。鍵は、荷主との付き合いでもなく、値上げ交渉の巧みさでもない。物流の品質と効率化について常に提案能力を磨いていたことだ。それは運んでいる荷物を「いかに最高の状態で届けるか」を真摯に追求してきた結果ともいえる。
燃料高騰時、サーチャージ制の導入や運賃アップの交渉には経費を開示し、「これだけ燃料が上がったので運賃を上げてください」とお願いするのが普通だ。同社は運賃交渉する際、「お願い」ではなく、「物流改善の提案」とした。それも荷主の物流コストを下げる内容だ。例えば、4トン車で行う小売店舗への配送業務。物量のピーク時より30%程度少ない車両を保有し、トラックが足りない時は傭車を出すというのが荷主でも同社にとっても長年のやり方だった。同社長は物量の波動を詳細に分析し、積載量が50%増える車両を導入することで台数を2台削減、傭車も使わなくて済み、物流の総コストが下げられることを突き止めた。これを荷主に提案し、全て呑んでもらった。車両が大きくなったため運賃単価は上がり、外注費が減った分、同社の利益も向上、WIN WINの改善提案となった。
また、温度ごとに別拠点となっていた物流センターの再編も提案。冷温・常温を扱えるセンターを確保し、輸送費・リードタイムとも抑えた。併せてセンター内のオペレーションの改善にも着手、作業効率も上げた。
荷主は大手の運送事業者とも多く取引していたが、「このような提案をしてきたところは初めて」と高く評価され、大手が行っていた運送・センター業務まで引き受けることになった。
センター業務が増えたことで、売り上げに占める燃料費の割合も下がった。「燃料費は売り上げの4%程度。燃料費が上昇しても、売り上げに占めるコスト上昇分は1%未満。それなら、改善提案でいくらでも賄える」と話している。
荷主に対して、効率化やコスト低減の提案をするだけではなく、同社長はその一歩先を見て、「最終消費者にいかに最良の状態で商品を届けるべきか」ということを普段から考えている。本州への生鮮食品輸送の場合、コストを重視すればコンテナ輸送が選択されるケースが多い。しかし、同社長はリードタイム、貨物列車の揺れやドライアイスによる商品の劣化、細かい温度管理ができないことなどの影響を、販売地まで行って味を確かめ、「物流の過程で商品の鮮度と味が落ちている」と判断した。
よりおいしい商品を消費者に手にとってもらうために「揺れの少ないエアサストラックで細かい温度管理を行いながら、商品劣化を防ぐガスを用い早く届ける」輸送を提案した。
コンテナより輸送単価ははるかに高いが、トラックに積み替えることで、届けた商品の品質は別物になり、やがて荷主ではなく、販売者から指名されるようになった。同社長は「いかに積み荷を良い状態で届けるかにフォーカスしていれば、仕事の内容や会社の規模にかかわらず、改善する点がいくらでも見えてくる。いつもこのようなことを考えているので、仕事が面白くて仕方がない」と語っている。(玉島雅基)
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