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    震災後、運送事業者がすべきこと

    2011年7月1日

     
     
     

     2011年3月11日に起きた東日本大震災。未曾有の災害を経て、事業者達が考える「すべきこと」とは。各事業者のさまざまな取り組みについて聞いた。


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    とにかく動くこと

    三重執鬼(三重県鈴鹿市)の寺田忍社長は、震災直後からこれまでに6回、被災地に向かっている。緊急支援物資に始まり、このところはパンづくりなど現地での炊き出しに尽力。自動車メーカーを荷主に持つ同社にとって目先の経営も気になるが、「助成金の申請など、できることはしている。あとは考えても仕方がない」と話す。支援を続ける中で、東北行き荷物の輸送依頼もクチコミで増えているという。

     寺田社長が今回の震災で強く思ったことは「とにかく動くこと」。ボランティアに出向いた当初は被災者から「興味本位」と疑われ、白い目で見られたという。当然、何をするのかといった指示もない。そこで同社長や同行した社員らは何をすべきか自ら考え、仕事を探した。

     そして、避難所の近くにある400年の歴史を持つお寺で境内の瓦礫を撤去した。住職からは「私の代で幕を下ろすのかとあきらめかけていたが、またやる気が出てきた」と感謝された。さらに鈴鹿市内のパン屋さんと共同で行ったパン作りなどを続けるうちに、被災者も徐々に心を開き、感謝の言葉をかけてくれるように。「パンを一緒に作る子どもらの笑顔が忘れられない」。

     同社長に、運送事業者がすべきことについて聞くと、「被災地に向かう場合でも遠慮せず、しっかりと運賃を提示すること」だという。「無料で運んであげたい気持ちは大きい。しかし、それをすると荷主が次の依頼をしづらくなる」。運ぶ側の体力が続かなくなってしまうこともあり、コストに見合う運賃請求が長期的な支援につながると話す。(加藤 崇)

    環境事業で培ったノウハウ提供する

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     「全社をあげて被災地のために取り組んでいく。問題になっている被災地の瓦礫処理についても、当社の環境事業で培ったノウハウを提供したい。復旧の基本資材であるセメントの輸送で生きてきた会社として最大限の協力をしたい」と話す、フコックス(東京都江東区)の鎮目隆雄社長。

     セメント輸送を手がける同社が産業廃棄物の収集運搬を始めたのが15年前。建築、土木工事に伴う瓦礫やコンクリート屑の適正な処理の仕方や再資源化についてコンプライアンスの徹底を図りながら追求し、環境事業を展開してきた。

     全ト協のセメント部会長も務める同氏は「本格的に復興に向けて動き始めたとき、現状のトラック台数では足りなくなる」と考え、別エリアの事業者やセメント部会を含めたバックアップ体制の必要性を強調。セメントメーカー系列の枠を超えた協力などを視野に入れている。「時間はかかるけれど、じっくりやっていきたい。復興のためにどこまでできるかを考え、実行していく」。(杉?あゆみ)

    助け合いの精神で被災者の採用を検討

     東日本大震災の被災者の中には就職先を失ったり、採用の内定が取り消されたりする人も少なくない。新和託送(奈良市)ではハローワークからの呼びかけに応じ、被災者のための緊急的な採用について前向きに検討している。岡本信雄社長は「復興には時間がかかる。落ち着くまで我が社で面倒を見ることができれば」と話している。

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     被災者の雇用については助成金制度を活用できるが、同社はこれまでにもハローワークのトライアル雇用制度を活用して、人材を採用した経験がある。トライアル雇用とは、労働者を短期間の試用期間を設けて雇用し、企業側と労働者側が合意すれば本採用が決まるという制度で、本採用に至ると奨励金が支給される。

     同社は今後、従業員の意見も聞いた上で募集手続きを行っていくが、軽四トラック、2?車による地場配送を中心に2人程度採用する意向だ。住居はアパートを借りて当分の間、全額補助していくという。

     同社長は「同業者でも大きな影響が出ている中で、幸い我が社に大きな影響はなかった。助け合いの精神で何か役に立てることができれば。遠く離れた土地だが、希望者がおれば温かく迎え、何年後か『よかったなぁ』と東北へ帰ってもらえれば」と話している。(大塚 仁)

    我々は輸送のプロ もっと情報発信を

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     震災直後から、自治体や荷主の要請を受け、ト協をはじめ多くの運送会社が緊急物資輸送に携わり、被災者を支えた。札ト協職員も3月の3連休は休みなしで、車両の手配や最適な輸送計画の策定に奔走したという。ただ、震災後の緊急物資輸送について一般報道で目立ったのは、混乱した状況の中で奮闘するコンビニや飲料メーカー、石油元売りなどの映像。これらに比べ、輸送の実務を直接担ったトラック運送業界の働きが、大きく取り上げられることは少なかったといえる。

     伊藤昭人会長は「なぜ、トラック協会が大震災後のロジスティクスのイニシアチブを取れなかったのか。全国6万2000社の会員の知恵を借りれば、混乱で物資が届かないということはないはずだ」と指摘。「我々は、大型車で行けないなら2?車で、それでもダメなら軽自動車で、それでもダメならスーパーカブで、物資を担いででも届ける輸送のプロフェッショナル。我々の能力について内部からの情報発信が足りなかったのではないか」と話す。(玉島雅基)

    自粛は復興の妨げ 支援するため稼ぐ

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     東京港を拠点にフェリー輸送を展開するフェリックス(小西和夫社長、東京都江東区)。東日本大震災が発生した3月11日以降、荷動きが悪化するなどの影響を受けた同社だが、「徐々にではあるが荷が戻ってきた」と、小西社長は話す。

     原発問題や行方不明者の捜索が続くなど、まだまだ震災の影響が残る被災地を前に、首都圏でも自粛ムードが漂っているが、同社長は、「我々被災していない者が自粛してしまうのは経済の停滞を招き、結果的に復興の妨げにもなるのでは」と指摘し、「救援物資の輸送など、運送会社としてやるべきことはあるのだろうが、それ以上に以前よりもっと働いて、もっと稼ぐことが大切ではないか」と話す。働いて稼ぐことで、会社や個人に余裕ができ、それによって被災地の支援もできるという。 (高田直樹)

    支援に向け情報収集

     35年の社歴を持つ桑川運輸(東京都江戸川区)は、木材を中心とした住宅建材を取り扱う。2代目の上村広行社長は地震発生時を振り返り、「ドライバーの携帯電話につながらず、一人目と連絡が取れたのは2時間後。全員の無事を確認するまでが大変だった」という。

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     震災後、すぐに通常の輸送依頼があったので対応したが、その後の荷動きは流れが良くないという。「もともとピークは2月までで、3月からは物量が落ち着く時期だが、それ以上に、建築に必要な材料がそろわないなどの理由で輸送が停滞。今後、仮設住宅の建設で動く可能性もあるが、その見通しは立たない」。

     今後の対応について、「支援に動きたいが、今は情報を集めている状態。ドライバーには『有事の際は無理に帰社せず個人で状況判断し、身の安全を図ることを第一に行動すること。その後、速やかに会社に連絡を取るように』と指示した」と語る。(小澤 裕)

    交付金を活用しよう

     神戸市内のトラック事業者は、運輸事業振興助成交付金の有効活用を提案する。「救援物資を運ぶのにも費用がかかるが、運賃の出ないNPOなどからの要請にも応えられるように、税金を原資とする交付金を使うこと。業界の地位向上などを100回叫ぶより、市民社会での地位はずっと上がる」。

     この声に呼応するのが、兵庫県内の別の事業者だ。「交付金の存続をト協が本気で考えるなら、こうした使い方をするべき。従来の使い方をしてきたから『仕分け』の対象になった。救援物資輸送を交付金で支える案は、業界の絶好のPRになる」とする。(西口訓生)

     
     
     
     
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