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    円満退社のはずが弁護士から封書 恩を仇で返すドライバー

    2011年8月22日

     
     
     

    truck2_0822.jpg ドライバーのためだと思ってやった親心が裏目に出てしまい、労働審判を申し立てられてしまった運送事業者。中小・零細企業が圧倒的に多い運送業界にあって、経営者らは、自身が苦労して経営してきただけに情け深い人が多い。だが、その情けを逆手に取る行為が目立ってきているのが事実。ドライバーと経営者の間にトラブルが頻発している。ドライバーに訴えられた事業者は、「はらわたが煮えくり返る思いだが、同時に飼い犬にかまれることは、本当に辛いことだ」と吐露している。



     埼玉県の事業者に、そのドライバーが入社したのは平成20年5月。社長自身が面接して採用を決めた。同社社長は、「特に問題もなく、真面目に仕事をこなしていた」という。

     だが、3年目を迎えた今年、異変が起こった。休暇中に交通事故で怪我をしたとして、診断書を提出してきたのだ。全治2週間という医師の診断書を渡された同社長は、その診断書の通り、ドライバーに休むことを許した。しかし、2週間が経っても出社をしてこなかったため、ドライバーに連絡を入れた同社長は、「さらに休む場合、診断書を再提出するように求めた」という。

     しかし、ドライバーは、診断書の準備をするどころか、今後のことを話し合おうと約束した日にドタキャン。結局、話し合うこともできなかった。同社長は再度連絡を入れ、出社するよう約束を取りつけたが、その日も結局、ドライバーは出社せず、連絡も取れなくなってしまった。

     同社長は忍耐強く連絡を取り続けた。というのも、そのドライバーが親を病気で失って間もない中で、気落ちしていることを知っていたからだった。何とか仕事に復帰させ、通常の生活を取り戻させてあげたい…そんな親心から、同社長は裏切られながらも、話し合いの場を持とうとしていた。

     そんな同社長の粘りが通じ、ようやく連絡が取れ、会って話をする機会を得られた。「いろいろと話す中で、うちの仕事を続ける気がないことが分かった」という同社長は、「このままでは、会社にも、ドライバー本人にもよくないからと、辞職を促した」という。

     それに対し、ドライバーも納得して受け入れたという。ドライバーの自己都合での退職で済ますことも可能だったが、ただ、自己都合での退社となると、失業保険がすぐに下りないことから、会社都合での解雇として処理。同社長の思いやりであった。

     ドライバーは円満退社し、会社は平穏を取り戻したはずであった。しかし、辞めてしばらくして、ある弁護士事務所から封書が届いた。辞めたドライバーの残業代や深夜割増賃金の未払い分を請求する内容だ。

     話が違うと掛け合うが、状況は変わらず、同社は結局、元ドライバーから労働審判を申し立てられてしまった。元ドライバーは、一方的な解雇だと主張した上で、残業代の未払いなど1000万円超を請求してきたという。「未払いが出ないように賃金規定を改定しているため、請求はほとんど退けられる」と主張する同社長だが、「金額うんぬんよりも、訴えられたことにはらわたが煮えくり返る思い」と吐露する。

     ドライバーを思いやって、情けをかけたことが、結果的に裏目に出てしまった。「飼い犬にかまれるとは、こういうことをいうのだな」と話す同社長。「裏切られたことが本当に辛いし、切ないなあ」と肩を落としている。(高田直樹)

     
     
     
     
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